クラスメイト
「おはようゴザイマース!」
「おはようございます。フランチェスカさん。綾瀬君」
「おはよう」
朝教室に入ると、フランの元気が良すぎる挨拶で、朝一のクラスの笑顔を手に入れた。そんなフランにいつも律儀に挨拶を返してくれる大和さん。大和さんとは前に雪合戦をした仲なのだが、その時の記憶が少し曖昧だ。楽しんだはずなのに、なぜか香月先輩と横になっていたのは覚えている。ん? 雪合戦……振りかぶって……脳天直撃……うっ、頭が! ダメだ。思い出せない。
まぁ生きてるわけだし、なんの問題もないだろう。
そんなわけで大和さんと同じクラスになった。
「綾瀬ぇ。今日も可愛い彼女と御登校ですかぁ?」
「そんなんじゃないって。フランはうちにホームステイしてるだけだって何回も……」
「オー! ユータ! おはようございマス!」
「んー。おはー」
僕に肩を組んで話しかけてきたのは、日野雄太。人懐こくてデカいバスケ部。大和さんの友達。
「麻里奈ー! おはようゴザイマース!」
「はい、おはよう。今日も元気ね」
そこでフランとあいさつをしているのが、野上麻里奈さん。この人も大和さんの友達。
去年は違うクラスだったからどうやって大和さんとこの二人が仲良くなったかはわからないけど、少なくとも大和さんと知り合ったことによって、僕の交友関係が少し広がったのは確かだ。
それにフランだが、相変わらずわけのわからない日本語が時々出ているが、それでも持ち前の明るさで、クラスの人たちと仲良くなりつつある。ある意味、クラスのマスコットキャラみたいになっているのは間違いない。
あ、そうそう。もう一人。
「琴乃ー」
「おい! くっつくな! 朝から暑苦しい!」
「おはようは返さないと、神様仏様カラおしおきが来ちゃうヨー」
「そんな言い伝え聞いたことねぇよ!」
あそこでフランに絡まれている伊吹琴乃さん。アイドルだそうだけど、今はかくかくじかじかで休業中らしい。アイドル業界は難しい。とはいえ、貴重なツッコミ要因のような気がするので、あの調子で僕の代わりにフランへのツッコミを頑張ってもらいたい。
あとは菅くんと早乙女くん。この二人も大和さんと仲が良いそうだ。
こう考えると、大和さんのコミュ力が計り知れないように思える。
僕は、『フランの友達』というポジションにいるように感じる。感じるだけで向こうはどう思ってるかわからないけど、それでも交友関係は広がった。……知り合いが増えた? うん。これだな。
そんなわけでクラスメイトで知り合いが増えたわけだけれど、それでもフランは僕のそばが落ち着くのか、休み時間の度に僕の席へとやってくる。去年、捗っていた『休み時間の読書』が全然捗らない。どうしたものか。しまいにはトイレまで付いてくる始末だ。さすがにこれはその場で教えた。外国では普通なのか? それともフランがバカなだけなのか?
そんな昼休み。
「浩二ー」
「ん?」
「そんなニ本ばっかり読んでて楽シイー?」
「面白いって言ってるじゃん」
「そうじゃないノ! フランももっと遊んでほしいー!」
常に音量MAXなフランの声に、クラス中が騒めいた。
まるで僕がフランと遊んであげてないみたいに聞こえるじゃないか。こう見えても放課後には町案内とかもしてるし、文芸部にだって出ている。休みの日も読書の時間を削ってまで、町案内や日本語の練習だってしている。どれだけフランに時間を割いていると思っているんだ。
「フラン」
「ハイ!」
「部長の所に行ってきなさい」
「ぶちょー?」
「さっき部長が呼んでた」
「ぶちょー来てタの?」
「いや、えっと……僕の脳内に直接語りかけてきて、フランと友好度を深めたいって言ってた」
「オー! それならちょいと行ってくらぁ!」
そう言った金髪碧眼の江戸っ子は、楽しそうに走って行った。
フランは、適当に難しめの日本語で言うと、なぜか納得してくれる。納豆は嫌いみたいだけど。
そんな僕を見ていたのか、後ろから野上さんが僕に話しかけた。
「綾瀬くんは、意外とお茶目なのね」
「……聞かなかったことにしてください」
フランチェスカ・フィリップ
略してF・F。
綺羅ケンイチさんより、奏ちゃんとその仲間たちをお借りしました。




