春休み
僕は自分の家でのんびりと読書を楽しむ予定で、立花先輩は日長ゲームに没頭。
しかしあの迷惑で有名な二人は暇をしているらしく、今日も我が家に上がり込んで妹にちょっかいを出したり、僕の部屋にあるマンガを朗読とかしちゃったりして、僕の読書生活をことごとく邪魔している。
「もう帰ってもらえませんか?」
「何を言っているのかね、綾瀬君は」
「そうだぞ綾瀬。まだ来てから十分も経ってないだろ」
「いや、僕呼んでないですからね」
「今のは読書と呼ぶをかけたんだな。将来は落語家かな☆」
バチコーンとウインクをする香月先輩がうざいです。
「とはいえ、こうして中に入れてくれているんだ。観念しろ、綾瀬君」
「先輩たちが勝手に入ってきたんでしょう」
「人聞きが悪いことを言うな。妹ちゃんに言って入れてもらったんだ。決して不法侵入ではない」
十分前。
綾瀬家玄関でのやりとりを、僕は自分の部屋で聞いていた。
「やぁ、妹ちゃん」
「……お兄ちゃんはいません」
「いやいや。さっき電話をしたら速攻で切られたんだ。つまり手元に携帯があって、それをいつでも見れる状況下にある。ということはだ。外に出かけてはいないし、かといって誰かが来ているというわけでもない。よって、綾瀬君が一人で家にいるということはわかっているんだよ!」
「ぐっ……」
「わかったなら入れたまえ」
「うぐぐ……ど、どうぞ」
「フフフ。わかればいいんだよ。お邪魔するよ」
「おじゃましまーす」
そして僕の部屋があっという間に侵入を許してしまった。
ちなみに使えない門番の妹は、僕の隣で寝ている。いや、そういうやらしい意味じゃなくて、部長の口車に乗せられたことに僕の指摘で気づかされて、悔しくて泣いてしまって、それで泣き疲れて横で寝ている。
「おー。綾瀬の妹も、黙ってればそっくりだな」
「そんな親戚のおじさんみたいな目で人の妹を見るのはやめてもらってもいいですか?」
「誰がロリコンか」
「そこまでは言ってないです」
どうでもいいんだけど、帰ってくれないだろうか。
「ときに綾瀬君」
「なんですか」
「春休みも部活があると言っただろう。どうして連絡をよこさないんだ」
「だって活動内容が無いのがウチの文芸部じゃないですか。だったら参加してもしなくても一緒じゃないですか」
「何を言っているんだか」
そう言って部長が取り出したのは、棒状の機械みたいなやつ。
その機械についている小さなボタンを、ニヤニヤとしながらポチッと押した。
『部長。僕は、この部活が好きです。文芸部っぽくないくせに文芸部を名乗ってるところとかも好きです』
「ぐっ……これは……」
「わかったかな? 綾瀬君の想いはすべてこの中に封じ込めているのだ」
「ブラックボックスだな。黒くないけど」
先輩もニヤニヤしながら参戦してきおった。
「か、完全に黒歴史です」
「おやおやぁ? 黒歴史だなんて私は寂しいぞ? 私にとっては宝物同然なのだからなぁ!」
「俺は生で聞けてないから、これで全部聞いたぞォ!」
「「アーッハッハッハッハッ!」」
高笑いをする二人。
もう本当にこの部活やめたい……
そして早く帰ってくれ……




