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四人目の部員

バスケットには幻のシックスマンが。

サッカーには十二人目のフィールドプレイヤーが。

常に動きまわるスポーツには欠かせない、控えであり、キーマンである存在。

リーサルウェポンとでも言えば聞こえがよいであろうか。

そんな存在になりえるであろう人物が、今僕の目の前に現れていた。


いつも通りに、授業が終わって部室に向かうと、なにやら中から楽しそうな声が。まぁもちのろんで部長と先輩の声なのだが、その声に混じって違う声が聞こえてきていた。

僕はまた部長と先輩が誰かを巻き込んでいるのかと思い、ため息をついてから部室の扉を開いた。

すると、いつも僕が座っている椅子と、机を挟んで反対側の椅子、先輩の隣の椅子に見慣れぬ男子生徒が座っていた。どことなく地味目な印象が伺える。比べる対象がそこの二人だからかもしれないけど。


「おぉ。これは綾瀬君。今日も楽しいかい?」

「普通です」

「普通か。そうかそうか。それはよかった。つまりは楽しいということだね。うんうん」


何を納得したのかわからないが、大きく縦にうなずいた部長。

そんな部長を無視して、どちらにともなく話しかけた。


「こちらのかたは? また部長たちが連れてきたんですか?」

「こいつは文芸部の部員だぜ?」

「ハハハ。香月先輩は嘘がヘッタクソですね」

「おい! それはひどいだろ!」

「あー。君が綾瀬君か」


香月先輩が猛抗議をしようかという勢いで机に身を乗り出したとき、見知らぬ男子生徒が口を開いた。


「僕が綾瀬ですけど、あなたは?」

「立花です。一応二年生です」


そう笑顔で言う立花さんを見て、とても良い人だと思った。


それから少し立花さんとしゃべった。

立花さんはちゃんとした文芸部員で、部長と先輩が文芸部を作った当初から在籍していたそうだ。

しかしまったく文芸部としての活動をしない二人に嫌気がさして、文芸部には顔を出さなくなっていったそうだ。やめようかとも考えていたのだが、部長からの強いお願いにより、退部はしないで、幽霊部員として在籍していたそうだ。

で、久しぶりに部長に話しかけられたところ、僕が在籍しているということを聞き、僕ならキチンとした文芸部員の仕事ができるかと思って、今日ここに至るとのこと。


「綾瀬君が入ってくれてすごい嬉しいよ! なんせ、高城さんも香月くんも文芸部の文芸部らしい仕事なんてまともにしてくれくれないし、いっつも雑談で終わっちゃうし」

「あーわかります。ほんとに何もしないですもんね。僕が本を読んでなかったら文芸部なんて存続してなかったんじゃないかって思うくらい文芸の要素皆無でした」


もう初めて会ったような気がしなかった。

互いに溜まっていた鬱憤をこれでもかというくらいに笑顔で吐き出していた。

そんな僕と立花さんを、部長がムスッとした顔で見ていたが、僕は気が付かないふりをしておいた。


そして部活カッコカリも終わり、別方向の立花さんと香月先輩と別れ、同じ方向の部長と並んで歩いた。


「綾瀬君」

「なんですか?」

「私は文芸部っていうのは楽しいところだと思っている」

「基本的に部活は楽しくあるべきだと思います」

「ではなぜさっきは無視していたのかな?」


やっぱりバレてたか。


「せっかく文芸部の仕事ができるんです。この機会を逃したくはないと思いました。部長に言っても校内新聞とか文芸部の文集なんかは作ることはないでしょ?」


またさっきと同じ顔をしているかと思い、部長を横目で見てみると、少ししょんぼりとしたような顔で、前を見て歩いていた。

僕は続けた。


「一応文芸部に入ったからには、僕だってそういうものを作りたかったっていうのはあるんですよ。だのに部長と先輩はそーゆーのに一切興味ないみたいだったし。だから同じことをしたいって思ってる人に会えたのは、単純に嬉しいんですよ」


ちょっと言い訳がましくなってしまったが、とりあえず思っていることは伝えた。

そんな僕への返答は、一言だけだった。


「そうか」


それだけ言って、足を止めた僕を置いて、部長は足を止めずに歩いて行ってしまった。

僕は嬉しい反面、胸の中にしこりのようなものを作ってしまった気がした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついに新キャラ登場からの不穏な空気。


次回もお楽しみに!


うろな町のHP更新してます。

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