雪スノー
「おー」
すっかり町は雪のおかげで白一色に染め上げられた。
そんな町の様子を、普段は閉め切っている部室のカーテンをおっ広げて、窓から見下ろしていた。
目の前にはちょうどうろなの山が見える。
「すごいな。ここまで積もったのは私は初めてだ」
「俺も気分が高揚します」
「僕も初めてですね」
そんなわけで、僕ら三人はとてつもなく気分がハイテンションだった。
というわけで、
「よしっ! 雪合戦だ!」
「おっしゃああ!!」
「……三人で?」
「そんなわけがあるか! ……ないよな?」
雪がパラパラと降ってはいるが、テンションが最高にハイになっている僕らには関係なく、グラウンドに出てきていた。
先輩は勢い任せに言ったのだが、部長が思い立っただけで行動するのは珍しくないため本当に三人でしかも二体二のチーム戦もできずただの雪玉のぶつけ合いをするのかと考えてしまい、部長に聞き返していた。
「無論だ! えーと……そこのお嬢さん!」
☆
お嬢さんて。
声をかけられたのは、以前うちの部活に見学(仮)に来たことのある、大和奏さんだった。
「えっと……どちらさまですか?」
「おいおいおいおい。私だよ私。あんなことやこんなことをした仲じゃないか」
そう言って肩に腕を回す部長。しかし身長差のせいで少しいびつなのは内緒だ。
「おっ! この前のお嬢ちゃん!」
「お嬢ちゃん?」
「あの奥義は習得できたかな?」
「奥義……ですか?」
僕はなんとなく理解できた。
この二人がヘンテコな格好をしているから、大和さんが判別できないんだ、と。
しかし、部長のリアクションを見ると、きっとこの人のことを覚えていないのだろう。長期記憶の乏しい人だ。
「大和さん。この人たち、うちの部活の先輩と部長」
「そうだ! 私が文芸部のリーダーの高城だ」
「俺の方が仲良さそうだっただろうが! 俺が副リーダーの香月だ! そしてこいつが下っ端の綾瀬」
「おい」
「そうでしたか。あの時の方たちでしたか。申し訳ありません」
「そういえばお嬢さんの名前はなんていうんだい?」
絶対部長は忘れてる! これは確定要素だ。
「大和奏と申します」
「ほう。奏ちゃんか。可愛い名前だ」
「ありがとうございます」
何やら親しげに話している部長と先輩だが、まったくもって、会うのはこれが二回目である。どうやったらこのコミュ力が発揮されるんだ? いつもは鶏肉集団なのに。
「今日はもう帰るだけかい?」
「はい」
「そうかそうか。ちょっとだけお姉さんたちと遊んでいかないかい?」
「遊ぶ、ですか?」
不思議そうに首をかしげる大和さん。
そりゃそうだ。そんなに仲良くもない人間から話しかけられた上に、一緒に遊ぼうなどわけがわからない。
しかしそんな考えとは裏腹に、話はどんどん進んでいった。
★
「奏ちゃん。一緒に雪合戦をしないかい?」
「雪合戦?」
「そうだ。私と組んで、あの男共に雪玉をぶつけてやるんだ」
「雪玉をぶつける戦いですか?」
「そんな感じだ」
「わかりました」
香月先輩が高城部長に『美少女と組むなんてズルい!』と言っていたが、華麗に無視されていた。
そんなこんなで、僕と香月先輩、部長と大和さん、という二対二の雪合戦が始まった。
「雪玉が当たったら負けだ。先に相手二人に雪玉をぶつけた方の勝ちだ」
「オッケーだ!」
「わかりました」
部長が簡単にルール説明をすると、グラウンドである程度の距離をとって、なんの遮蔽物もない雪合戦がスタートした。
「では行くぞ! レディ、ゴー!」
と、スタートしたのだが、
「よっしゃうごっ!!」
香月先輩がスタートした瞬間、パァーンという音と共に、ラリアットにかけられたプロレスラーのごとく、仰向けに倒れ込んだ。
「は?」
僕は何が起こったのかわからず、ただ耳に入ってきた言葉を聞いた。
「ヘッドショットです」
その言葉に相手チームを見てみると、投げ終わったモーションの大和さんがこちらを見ていた。
部長は一歩踏み出したところで固まっている。
「え? ええ?」
「次は綾瀬さんです。慈悲はないです」
まさか大和さんが? いやいやでもあんな距離から一瞬で雪玉を作って投げてそれをものの見事に頭に当ててなんの表情も無しに頭部命中のヒット確認をできるわけがな
僕の意識はそこで途切れた。
綺羅ケンイチさんより、奏ちゃんをお借りしました。
瞬殺スナイパー。おそるべし。
奏ちゃんはロボ子ですので、雪玉でヘッドショットを決めるくらい、朝飯前です。
次回もお楽しみに!




