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両手に花と前方のバカ

「お兄ちゃん」


ふといつものように部室でひまぁな放課後部活ライフを送っていると、ドアをガラガラと開けてほぼ毎日聞いている妹の彩奈が顔を覗かせていた。


「彩奈? どうした?」

「お兄ちゃん、忘れ物」


そう言って手だけを部室に入れて、一枚の紙切れを差し出した。

立ち上がり、妹のところまで行って見てみると、今日までに出さなきゃいけないプリントだった。そういえば自分の部屋の机の上に置いてきてしまって、明日遅れて提出しようと思ってたプリントだった。


「あー。わざわざありがと。明日でも良かったんだけどね」


僕は妹の頭を撫でると、妹は『むふふー』と言って笑った。


「綾瀬」

「はい?」


いつになく神妙な面持ちで香月先輩が話しかけてきた。


「それは妹というやつか?」

「あれ? 会ったことなかったでしたっけ?」

「いや、見たことはある。だが関わった記憶はない。改ざんされたなら話は別だが」

「じゃあ改ざんされたんじゃないですか?」

「お兄ちゃん。あの人たち誰?」

「え? 彩奈も会ったことあるでしょ?」


聞くと、フルフルと首を振る彩奈。

なんだこの状況。互いに会ったことがあるのに会ってないという。記憶を改ざんされていたのは僕の方か?


「夏祭りの時にあっただろうが。貴様の記憶力はザルか?」

「マジかよ。全然覚えてないぞ」

「妹も会ったことがあるはずだ」

「彩奈……知らない……」


部長。さすが部長。常識があるように見える不思議。


「と、まぁそんなことはどうでもいいんだ。とりあえず、ここは私の部活動の部室だ。妹、君はとりあえず綾瀬から離れようか」


いつのまにか腕に抱きついていた彩奈へ注意をする部長。全く気がつかなかった。筋肉に気づかれないように触れてくるとは。さすが我が妹。


「やだ」

「むっ……部長だぞ? 部長の言うことは聞かないといけないんだぞ?」

「彩奈、部活入ってないもん」

「……このブラコンめ」


……ひ、否定できない。

彩奈は前からこんな感じだ。僕にべったりしているせいで友達もいないみたいだし。

ここは兄としてビシッと言わないといけないか?


「彩奈。とりあえず腕を離しなさい」

「や」


いつからこんなにわがままな子になってしまったんだろうか?

そう考えていると部長が、妹が掴んでいる腕とは反対側の腕を掴んできた。


「……なんですか?」

「もしかしたら綾瀬の腕に何かストレスを軽減させるような効能でも隠されているのかと思って」

「いいから離してください」

「綾瀬っ! お前ばっかりずるいぞ!」

「ずるいって何ですか。先輩に譲りたいですよ」

「譲るってお前……バレンタインデーの日に『俺、こんなに甘いもの食えないからお前に少しやるよ』的な発言じゃねぇか!」

「例えがリアルすぎるだろぉ! やめろ! 僕はそんなにリア充じゃない!」

「どう見てもリア充だろぉがよぉ!! 右腕に妹! 左腕に高城! これを見てリア充じゃないと思う男子がどこにいる! 少なくとも一人にはリア充に見えてんだよぉ!」


と、香月先輩がワーワー喚く。

もうこれ以上の抵抗は逆に悪化へとつながってしまうと考えた僕は、反論をやめた。

そして腕にしがみついている二人を見ると、とても険しい目つきで互いのことを見ていた。

なんなんだこの状況……


「お兄ちゃんから離れて」

「イヤだ。うちの綾瀬は大事な部員だなんだから、お前なんかに渡さん」

「むむむ……」

「ぐぬぬ……」


もうこの部活やめようかなぁ……

僕は天井を見上げた。

香月先輩が投げて刺さったままになっている画鋲が見えた。なんかちょっとムカついた。



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