1日目B 司源道の場合(後編)
「お食事はいかがだったでしょうか」
ちょうど僕達が食べ終わるのを見計らってか、一人の男性が出てきた。ぼさぼさとしていた髪だが、その髪は綺麗にまとめられていた。
ただのスタッフではなく、彼もその『鬼才』ってやつだろう。他のメンバーにも心配りが良かったのも彼が料理を担当したのなら……それだって考えられる。
「わたくし、今回の料理を担当させていただきました、司源道と申します。今回のゲームで殺されることがなければ、最後まで担当させていただくことになるかと」
その人はそんなことを言った。
このゲームーー探偵犯人ゲームは殺された人間は仮想的とはいえ行動不能に陥る。
つまりは司さんが殺されてしまえば、こんな美味しい食事も食べれないってことになる。いや、もしかしたら『仮想的』だから姿を隠してさえいればいいのだろうか……?
「それは辛いね、エヴァン」
ケイリーが僕に向かって話してきた。おおよそ僕の心を読んだのだろう。これは探偵役にとってチートにも見えるけど、お互いに心を許した人間じゃなきゃ出来ないらしい。流石にそこまでヤバイものではないようだ。
「……まあ、そんな簡単に死ぬこともないでしょうし。大丈夫ですよ。そこまで気を落とさなくても。……さて、このあとオーナーからこのゲームの説明が為されるそうです」
「なぜ知っているのですか?」
「君は……彼女の付き添いだったね。解らないこともあるだろう、僕で良ければ話に聞いてあげてもいいよ」
「……それじゃ、司さんはここのオーナーに会ったことがあるんですか?」
「会ったことはないけど、友人だ。古くからの、ね」
そう言って司さんは一枚の写真を取り出した。気付くと僕とケイリーと司さん以外の人間はもう居なかった。たぶん自分たちの部屋に戻って、自分たちの世界に閉じこもったんだろう。
その写真にはひと組の男女が写っていた。男性は――司さんだろう。
「彼女こそがこの家の主人、だよ。名前は……今は、外野島内海だったと思う」
「今は?」
「結婚したんだよ、旧姓は鹿苑だったかな」
鹿苑、かなり変わった名字に思える。鹿苑寺ってのは聞いたことがあるけどね。
鹿苑寺。京都にあるお寺で、舎利殿『金閣』があまりにも有名なために金閣寺と通称されていたりする。寺名は足利義満の法号・鹿苑院殿にちなむもので、足利義満の北山山荘をその死後に寺としたものである。建物の内外に金箔を貼った三層の楼閣建築である舎利殿は室町時代前期の北山文化を代表する建築であったが、一九五〇年に放火により焼失し、一九五五年に再建された。つまり今は二代目の鹿苑寺が建っている。……まあ、そんなことはどうでもいいんだけど。
鹿苑ってのは珍しいから恐らく京都の方にしかない名字なのだろう。にしても女性だったとは驚きだ。
「……エヴァン、ねむい」
「ああ、そうか。それじゃ、寝ようか?」
僕の言葉にケイリーはゆっくりと頷く。よっぽど眠いらしい。目は殆ど開けられていない。
僕はひとまず彼女を背負って、彼女を部屋に連れていくためにそこを後にした。司さんはずっと微笑んでいた。
部屋に入る前に、一人の女性に声をかけられた。
赤のフード付きパーカに黄緑色のスカートを着た少女だった。顔はフードを深く被っていたから、見えなかった。
「……彼女、」
少女は僕の背中で寝ているケイリーを指差して、言った。
「ケイリーのことか?」
僕が訊ねると、少女は頷いた。大凡、彼女も鬼才なんだろうか。
次回更新:1月11日17時
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