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2日目B 事情聴取(後編)

「……吸血鬼が、この中にいる?」


 僕はケイリーが何を言っているのかさっぱり解らなかった。が、そもそもケイリーは嘘をついたことも、偽りの情報も言うことはない。つまり、彼女の情報は今まで全て正しかった。嘘をついたことは一度たりとも、そう、一度たりとも見たことがない。

 だからこそ、この事実も正しいのだろう。結局は確実な不確実要素が一つ確定しただけにすぎないのだけど。


「……ええと、ケイリー、でいいのかな?」


 エレンさんが手を挙げて声をかけた。丁寧な女性ひとだ。その言葉にケイリーは頷く。


「私の憶えが正しければ、吸血鬼とは血を吸うほかでもなく、赤ワインなど、血に見立てたものでも問題はなかったと言える。別にリスクを負ってまで、血を抜き取るとは考えられないんだが」

「あくまでも、の話だ。仮説を立てるのが推理小説の定説だ」

「くだらん!」


 ケイリーの言葉に鈴生さんは声を荒らげた。


「これは推理小説ナドではない。マガイナイ殺人事件なんだぞ!!」


 なんだか荒れてしまった。ケイリーと鈴生さんが口喧嘩に発展(尤も、見た人間からすれば鈴生さんが一方的に攻撃しているだけに過ぎないのだが)しそうになって。


「いい加減にしろ」


 机を叩く音が響いた。

 それが直ぐに戸塚さんが発した音だと言うことに僕は気づいた。


「……今、そんなものを論じている場合ではないのは明らかだろう。今は、彼女を殺めた人物をさがすべきだ」

「――そう言っている君こそどうなのかね? アリバイが殆どない。つまりは……犯人に一番近い人間だと思えるのだがね?」


 皆が、疑っている。

 この状況、どう打開すればいいのだろう。ケイリーはどうでもいいのか、パソコンに何かを入力している。英語だらけで、どことなく文面がデタラメに思えてしまうものだった。


「――ん」


 ケイリーが行動を停止した。どうしたのかな、とデスクトップを覗き見たらメールが来ているようだった。


「……なんだ、これは」


 どうやら、同じ文面のメールが全員に送られているようだった。

 僕は関係ない人間だからか、メールは来ていない。


「――拝啓、親愛なる来訪者達へ」


 ケイリーが唐突にメールの内容を告げた。

 その内容とは、こんなものだった。


 拝啓、親愛なる来訪者達へ。

 君達は突然のことで驚いたことだろう。これは、ゲームではないことを理解していただけただろうか?

 土生月日氏の死亡は悲しいことだが、それについて語ることもない。彼女は運が悪かった、ただそれだけの事だったのだ。


「――冗談じゃない、人が死んだのは“運が悪い”だ? そんな事よく言えるな……!!」

「まだ文面に続きはありますよ、鈴生さん」


 そう、まだ半分しか話は読み解かれていない。

 まだ、続きがあるのだ。


 ――これを見て、君達は漸くこの物語を理解してくれただろう。

 これは――『探偵犯人ゲーム』のファーストステージに過ぎない。君達にもルールは理解出来ているだろうが、犯人は探偵に犯人と知られるまでに犯人を殺せばよい。探偵は自らが死ぬ前に犯人を見つければいい。これは――ゲームではあるが、これでの敗北は即ち現実での死を意味している。

 さあ、最高のショウの始まりだ。


 だ、そうだ。と。ケイリーが締めた。オーナーはこれを楽しんでいるということさ。少なくとも普通の感覚ではあるまい。きっとオーナーも“鬼才”なのだ。


「……ふざけている。鬼才だ? そんなこと言う貴様(オーナー)こそ、“奇才”ではないか……!!」


 それを言ったのはエレンさん。さっきと比べて怒りの色が顔からうかがえる。

 つまり。

 つまりだ。

 あの文面から言えることが一つ、ある。

 ――オーナーは人の命をスゴロクのコマのように存外に扱える人間である。

 そのことを。


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