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プロローグ エヴァン(ぼく)の場合

 神凪沙織という人間は変わっている。

 それは僕が見ても解ることだ。彼女と会ってもう十年くらいにはなるけれど、それでも彼女の異端ぶりは解ることだ。

 彼女は七歳でアインシュタインの相対性理論を理解し、なおかつそれに変わる新たな理論を発表した。だが、七歳という年齢で世の科学者を飛び抜けたその存在は、科学者にとっては厭な人間だったに違いない。彼女の論文は発表されることなく、闇に葬り去られたとのことだ。


「……ねむい」

「こんなところにいたのか」


 島の高台にある一つのベンチに彼女は腰掛けていた。黒い髪に碧眼の少女は今茶色のセーターに黒のプリーツスカートを履いていた。何かを考えているらしく、どこか一点を眺めていた。

 彼女はいつもそうだ。いつだって、どこかを眺めて考えている。その考えは凡人である僕には永遠に解らないだろう、と教えてすらくれない。解らなくてもいいのだから教えてくれてもいいと思うのだが、やはり彼女らしいと言えばそうであるので僕は細かくそこまでは追求しない。


「どうしたのエヴァン」

「君こそなんでここにいるんだいケイリー」


 神凪沙織という名前にはケイリーというニックネームへ結びつくものはないが、彼女が自らをそう呼んでいるのだから仕方ない。沙織なんて呼んでも恥ずかしいし、だからって神凪さんではよそよそしい。結果として、僕が『エヴァン』、彼女が『ケイリー』というニックネームに収まっている。なんでこんなニックネームなのかは知らない。僕の名前にも随分と掠ってはいないんだけど。


「空を見ていたわ」

「空? なんで青いの、とかそんな感じのことでも考えていたのか?」

「そんなものは簡単だよ。プリズムってのがあってね、小さいガラスの三角柱のような奴なんだけど、あるひとつの光を七色に分けてくれるの。そして、地球の大気は青い光を散乱させる性質があってね。その後それを大気で繰り返して、結果として青い空になるって話」

「へえ……よく知ってるね」

「解りきったことを言わないで」


 そう言ってケイリーは少しだけ俯いた。どうやら彼女を怒らせてしまったようだ。彼女を怒らせては若干居心地が悪くなる。何せ僕は――オマケの存在なんだから。

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