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第二章 第四話

「ヴォルトカルグ様! …ハァ、ハァ、お怪我は…?」

右のほうから、レイナがヴォーグの元へ駆け寄る。彼女は今までずっと走って追ってきていた。

後方での救援が主な役目のレイナでは、従士として戦闘についていくのはかなりの重労働だ。

ヴォーグの目の前でとまると、ひざに手をついて息を切らしながら、心配そうにヴォーグをみつめ上げる。

「大丈夫だ。何もない。…左腕がひどい、後で頼む」

何も傷は無いというのに、ヴォーグは左腕から出血していた。

その、黒いような血を見て、レイナは少しつらそうな表情をする。

「じゃあ、早く癒さないと。さっきこちらから来た男性はなんですか?強そうでしたが?」

追いかけてくる途中、レイナは金髪の男と遭遇していた。

男の、ヴォーグとは違った、殺意ではない凄絶な闘気を、彼女は感じていた。

「どうやら、味方だ」

「そうでしたか、敵ではなくてよかった」

安堵の息を漏らすと、今まで近くにいたはずなのに、ほとんど気配が感じられなかった、ヴォーグの傍らにいる女性が目に入った。

「あの〜、そちらの女性は?」

不信の視線をアーリアに向ける。その中には、ほんの少し、美女と呼べるアーリアへの女性としての羨望も混ざっていた。

「アーリア・ロザリア。討伐隊の一人だ」

「…来た」

レイナに挨拶するわけでもなく、一直線に伸びる街道のほうを向く、だが、目は閉じられたままだ。つられてそちらに目を向けようとすると、目の前で爆発的な砂塵が巻き起こる。

新たな敵かと思い、ヴォーグが身構えると、それは姿を現した。

「到着〜♪ ん? 何? あ、もしかして聖王の命令で? 武器持ってるし、周りの感じからしてもそうか、ぼく、クーガ・シュナイド、よろしく♪」

明らかに人の走行を超えた速度を持って目の前に現れたのは、一束だけ尻尾のように伸ばされた赤銅色の髪が印象的な、小柄な少年だった。大人になり始め、まだあどけなさの残る顔立ち。おそらく、身長は平均より低いだろう。

ヴォーグらがまだ状況を飲み込めずに困惑しているというのに、彼はどんどん話を進めた。幾分言葉足らずで内容は理解しにくいが。

「これで四人? 全員そろった?」

満開の笑みと共に少年が質問をする。

「あと一人…いる」

アーリアがまだほかにいることを、そっけなく、というより感情が全く見受けられない声で伝えた。

「え、でもそれじゃ五人じゃない? あ、そっか、優しそうな姉ちゃんの方は切れ目の従士か。戦えそうに無いもんね」

クーガと名乗った少年は、すばらしい速さで周りの状況を把握していく。洞察力なのか、勘なのかは判断しがたい。

「あんたっちの自己紹介は後でいいや、そいつがいるところへ集まろうぜ」

その言葉を聞き入れると、アーリアが先頭に立って彼の泊まっている宿へ向かった。

歩く際も、アーリアの目は閉じているが、何の迷いもなく歩を進める。もしかしたら、以前から失明していたのかもしれない。

「先ほどの男性とは、やはり知り合いなのですか?」

レイナが、金髪の男との関係について問う。

「いえ・・・」

その言葉に相違は無い。先ほど金髪の男は、だれだ、とアーリアに怒鳴っていた。その点からしても彼らは知り合いではなかった。

「じゃあ、なぜ、知っているのですか?」

「知りはしない。けど、視えていたからわかる」

「視えていた? じゃあ、あなたはまさか、目を・・・?」

質問をするが、彼女にこたえる気は無いようで、歩みは止まらない。

「ここ・・・」

返答を先延ばししたまま、アーリアは宿の中に入っていった。



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