第二章 第二話
「行くぞ」
「はい!」
森の中に立てられた兵舎の群を目視できるところまで進み、ヴォーグは奇襲を仕掛けた。
おそらく今日が山場なのだろう、兵舎の守りは手薄だった。
「敵だ! 敵が来た! 後ろからだ!」
「落ち着け! 一人だけだ、俺たちだけで何とかなる!」
たちまちに残っていた敵兵達が押し寄せてくる。
「我は戦魂騎士団、ヴォルトカルグ・スヴィエート!死にたくなければここを立ち去れ!」
「戦魂? …何だと!? 怯むな! 行け〜!」
聞き取れなかったのか、無視をしたのか、それとも己の欲か。誰一人逃げ出さず彼に向かってきた。
「やはり…。ならば…斬る!」
凄烈な闘気をみなぎらせ、剣を抜き放った。正面から来た敵の首をはね飛ばす。続けざま、肩めがけて横薙ぎに来た剣をしゃがみこんで避け、二人の足を切り払う。足首を斬られた兵の目線が一段下がる。斬られた痛みより、その事実に先に気づきながら、兵は絶命していた。かがみこんだ体勢から、すくい上げるように、敵の腕を斬り飛ばす。
次々と斬り伏せていった、まるで、鎧など無いかのようにヴォーグは両断していく。
あらかたの兵を斬ると、今度は兵舎に火をつけていった。これが、最大の目的であった。帰る場所を絶ち、こちらに注意がむかうようにするために。何とか戻る場所は確保しようと、必ずこちらにも兵力を割くだろう。もちろん鉱都が陥落しそうな今、兵舎などには目もくれずに攻め落とせば問題はなかったはずだが、彼らはそこまで策略を立ててないだろうということもヴォーグは考慮に入れていた。
全ての施設に火をつけ終わると、鉱都へ向けて走り出す。
こちら側に来た全ての兵を斬り、鉱都へたどり着くと、そこでは、民を踏みにじりながら戦っている金髪の男がいた。
金髪の男が振り向き、抜けるような空の色をした瞳と、目があった瞬間、ヴォーグは感じ取った。
状況とかそんなものではなく、本能とも言うべきところで。
あいつは、自分の敵だ、と。
「貴様は、俺の…敵だ!!」
ヴォーグは自分でも驚くほど異常なまでに昂ぶり、叫んでいた。金髪の男も同時に何かを吼えていた。
「故に…斬る!!」
「だから!! 打ち砕く!」
まったく同時に、踏み込んでいた…