第五章 第一話
長らくお待たせしました
本当に、期待していた方はすいません
なんかもう、これぐらいしかいえない・・・
戦いの勝利への先導者、ヴォーグたちは手厚く街に迎え入れられた。
ヴィレンほか数名の兵士と、ヴォーグたちで砦都の中心を縦断する大通りを歩いていた。なぜか、その中で、いつもは一番動き回っているクーガは、ただ回りの動きに従って動くだけで、黙り込んだままだ。
ヴィレンがヴォーグたちを先導して道を作る。
大通りは何かの行事のように人がひしめき合い、ヴィレンは道を作るのに苦労していた。
「これは、夜は宴だな」
そんなことをヴィレンがぼやくが、周りの騒音にかき消されて誰も聞こえてはいなかった。だが、もう街の住人たちの意思は決まっているようで、その言葉を聞かずしてすでに宴が催されることは決まっているだろう。
「あんた、もしかしてクーゲルかい?」
中年の女性が、賞賛される集団の中にいる見知った顔に声をかける。
「おう。久しぶりだな。あんたは変わってねえな。相変わらずうるさい」
はにかむような笑みを見せながらクーゲルは返事をする。
「みんな!! 帰ってきたよ、やんちゃ坊主のクーゲルが!!」
大声で女性は周りに知らせる。
「もうちょっと年食ってから俺はここを出てっただろうが」
そんな呆れたようなつぶやきも無視されて周りに人が集まってくる。
「本当だ、クーゲルじゃねえか!?」
「久しぶりだな、たくましくなったな」
「あっちで馬鹿なことはやってねえか?」
「お帰り! クーゲル!」
「ずいぶん出世しちまって、この俺も鼻高々だぜ」
さまざまな人から声を掛けられ、戸惑っている様子だったが、やがて、全員に聞こえるような、はっきりとした口調で、一つ言葉をつむぎだす。何よりも大切な、一つの言葉。
「……ただいま」
その言葉に、周りは安堵し、クーゲル自身も安堵していた。
「私のとこの宿に泊まっていかないかい?」
一番初めにクーゲルの存在に気づいた中年の女性が、明るい口調で聞いてくる。
「いや、決めているところがある、悪いな」
「あら、あの子のところかい? じゃあ、しょうがないね。夜はあまりはしゃぎ過ぎないようにね!」
どうやら事情はわかっているようで、押しの強そうな印象の女性だったが、強引な誘いはせず、すぐに引き下がった。
「わぁってるよ、いちいちうっせえな、あんたも」
女性の、ちょっとした下ネタにも動じず、というよりも浮かれて気づかずに、クーゲルは嬉しそうにしていた。