離縁いたします。四年の手間を冗談で流されたので、焼き損じの瓦を一枚持参しました——雨を二度で、お宅の屋根だけ褪せます
南の火は先に落ちる。
笑い声が、窯の口から噴き返してきました。火の色も見ずに笑えるとは、ずいぶん器用な職人衆でございます。
「南はもう赤みが痩せております。次の薪は半刻早く入れたほうがよろしいかと」
「また始まったぞ。嫁御の火占いだ」
親方衆が膝を叩き、お義母さままで口元を袖で隠しました。あら上品。笑い声は隠せておりませんので、袖一枚ぶん損をしております。
「瓦なんぞ、土を焼けば同じだ。南だ北だと、火に方角が分かるものか」
弥七さんは窯の前にしゃがみながら、わたくしのほうを見もしません。見れば南の赤が弱いと分かるので、見ないほうがご自分の勝ちでいられるのでしょう。勝負の仕方が安くて助かります。瓦なら三枚ほど。
「では、このままになさいます?」
「冗談だ。本気にするな」
出ました。火よりよく燃え、薪より長持ちする、弥七さんの便利なひと言。
嫁いでから四年、わたくしが焼いた瓦に名は入りませんでした。窯元の名は家のもの、火の出来も家の腕、ただし失敗したときだけ火を見た者の落ち度。たいへん行き届いた分け方でございます。
「おまえは細かすぎるんだ。夜中まで起きて、好きで火を見ているだけだろう」
「ええ。好きで起きていることにしておけば、お代が要りませんものね」
「何か言ったか」
「薪を何本入れるか、数えておりました」
六本。お義母さまの新しい帯留めなら半分。弥七さんが寄合で振る舞う酒なら一晩。わたくしの夜なら、もちろん無料でございます。無料というのは何にでも合う、家の者が大好きな味つけでした。
親方衆が窯場を離れ、弥七さんも欠伸をしながら母屋へ戻りました。南の火は、見送る足音に合わせるように細くなります。火まで遠慮を覚えなくてよろしいのに。
わたくしは薪を六本抱え、窯口へ屈みました。半刻早い火が奥へ走り、痩せていた赤がようやく持ち上がります。
焼き上がれば、家の名で売られる瓦です。わたくしの名だけ、今夜も煙より軽うございました。
* * *
薪は半刻早く足す。
「北の庇が八年、南の端が五年。あちらの二列は、次の大風まで保てば上出来でございますね。差し替えは百六十枚、割れを見込んで二百枚。あの立派な雨戸を一枚売れば、屋根が二面ぶん直ります」
「上がってごらん」
美濃さんは、わたくしの長い見立てを最後まで聞いてくださいません。聞かずに梯子を押さえ、先に屋根を指す。慰めの言葉より足場を出すお方です。まことに話が早い。
わたくしは裾をまとめ、梯子を上がりました。材木を扱う美濃さんの屋根は広く、軒も深い。屋根瓦に直しますと三千枚超。ああ、よい屋根。人様の屋根にうっとりする嫁など色気がないと弥七さんは申しますが、弥七さんの色気では雨漏りを止められません。
「南だけ、色が飛んでおります。土は悪くございません。火が最後まで回っていないのでしょう」
「何枚替える」
「見栄えだけなら百二十。次の二年まで考えるなら二百四十。美濃さんが値切るなら三百と申し上げて、二百四十で恩を売ります」
「正直だね」
「商いのご相談に来ておりますので」
「誰が焼けば保つ」
風が屋根を撫でました。美濃さんはわたくしを見ず、色の抜けた瓦の端を爪で弾いております。こん、と乾いた音。火の足りない音は、屋根へ上がっても言い訳をいたしません。
「南へ半刻早く薪を足せば」
「誰が」
「それは、窯元へお尋ねくださいまし」
「聞く相手を間違えたかい」
「美濃さんでも、たまには」
「たまにね」
短い。こちらが瓦二百四十枚ぶん喋っても、美濃さんは一枚で返してきます。負けた気がするのが少々癪ですが、屋根の上で口喧嘩をして転げ落ちますと、治療代が瓦五百枚。ここは慎みました。わたくし、勘定のできる女でございます。
その夜も、南へは半刻早く薪を入れました。火が落ちるたびに足し、土が焼け切るまで窯口を離れません。朝方、弥七さんが起きてきたころには、わたくしの髪も着物も煙の匂いでした。
「まだいたのか。寝ればよかったろう」
「そういたしますと、南が焼き損じます」
「大げさだな」
窯出しの列には、色の飛んだ一枚が混じっておりました。端が白く濁り、売り物の山へ入れれば、その一枚だけ先に年を取る色です。
「それくらい、裏へ回せば分からん」
弥七さんはそう言って、揃った瓦だけを数えました。わたくしは色の飛んだ一枚を抱え、土蔵へ運びます。
土蔵の奥には、同じような一枚が重なっておりました。南の火を申し上げるたび、薪を惜しめと言われるたび、冗談にされた夜のたび。全部を数えますと腹が減りますので数えません。焼き損じは食べられませんから。
「また置くのかい」
戸口からお義母さまが覗きました。
「売れませんので」
「そんなもの、捨てておしまい」
「ええ。そのうちに」
わたくしは山の一番上へ、今朝の一枚を重ねました。捨てるには、一枚ずつが少々重すぎたのでございます。
* * *
今月から火は見ない。
「薪を一割減らせ。こんなに使っていたら儲けが薄い」
弥七さんが書付を指で叩き、親方衆が揃って頷きました。薪一割。夜の見張りも一割削れればよろしいのですが、人間のまぶたには書付どおりの切れ目がございません。
「南の火は、そのぶん早く落ちますよ」
「だから、おまえは話を大きくする。今まで焼けているだろう」
「今までは、半刻早く足しておりましたので」
「頼んだ覚えはない」
その言葉は、窯場へ落ちても音がしませんでした。わたくしは書付の脇に置かれた土の札を手に取ります。今月頼まれたのは、瓦にして千八百枚ぶん。千八百。きれいな数です。夜の数だけ、どこにもございません。
「承知いたしました。土は千八百枚ぶん、きっちり合わせます」
「分かればいい。余計なことはするなよ」
「ええ」
土を量り、練り、頼まれた数に分けて渡しました。余りも不足もなし。わたくしの手は、言いつけられた仕事だけなら実によく働きます。褒めていただきたいほど。もっとも褒め言葉にも代金にもならないので、自分で採点して満点を差し上げました。
日が暮れ、親方衆が酒を開けました。今夜は火を見なくてよいのかと尋ねる者はおりません。弥七さんは一番大きな盃を取り、お義母さまは明日着る羽織の皺を伸ばしております。
あの羽織で瓦が二百枚。夜中に一度も起きずに二百枚。ずいぶん暖かな数え方でございますこと。
わたくしは窯口を通り過ぎました。南の赤はすでに細くなりかけておりましたが、渡された土の数は合わせました。頼まれた仕事は、そこまでです。
母屋へ戻って戸を閉めても、誰も追ってきませんでした。止められないというのは、存外、静かなものでございます。
* * *
一枚だけ色が違う。
新しい瓦は、窯から出した朝だけなら見事に揃って見えました。親方衆は胸を張り、弥七さんは腕を組み、お義母さまは「嫁が余計な薪を使わなくても焼けるではないか」と笑いました。おめでとうございます。朝日に濡らせば、少々の色むらは愛嬌です。
「ほらな。俺たちだけで十分だ」
「左様でございますか」
「おまえも夜更かしがなくなって、楽になったろう」
「ええ。夜とは、こんなに長いものだったのですね」
弥七さんは、満足げに頷きました。よいことでございます。今さら気づかれますと、こちらも説明に瓦五百枚ほど要りますので。
その月の終わり、まとまった注文の最後のひと窯が焚かれました。親方衆は酒に呼ばれ、弥七さんは「もう火は落ち着いた」と母屋へ引き上げます。わたくしは寝床へ入ったものの、窯の南で薪が爆ぜる音だけが遅れておりました。
遅い、細い、もう落ちる。聞かなかったことにすれば眠れます。眠れば朝が来ます。朝が来れば、揃って見える瓦が並びます。たいへん簡単。
わたくしは起きました。
窯場へ行き、南の口へ薪を足します。頼まれておりません。一度だけです。これで最後と口にすれば立派すぎますから、何も申しませんでした。
赤が奥まで通るのを見届け、薪の束を元へ戻しました。窯の南に詰めた一角だけ、火が痩せずに残ったはずです。ほかの瓦と並べれば、その朝は同じに見えるでしょう。
焼き上がった瓦は、窯の並びを崩さぬまま荷へ積まれ、その順で一つの屋根へ葺かれました。弥七さんは上機嫌で、家の名を書いた荷札を先頭へ結びます。
「見ろ。どれも同じ色だ」
「ええ、今は」
「何だ」
「よく揃っておりますね、と」
わたくしの名は、やはりどこにもありませんでした。家の札は風にはためき、まるで火まで自分で見たような顔をしておりました。札というものは、眠らず働いたふりが上手でございます。
土蔵からは、色の飛んだ瓦を一枚だけ取り出しました。山はそのまま残し、一枚を布で包みます。
家を出る荷は、驚くほど少なく済みました。着物と手拭いと、売れない瓦が一枚。四年というものは、包めばずいぶん小さくなるのでございます。
* * *
本日は普請を決める。
寄合の座敷では、弥七さんが家の腕前を語っておりました。親方衆は愛想よく頷き、宇多お義母さまは茶を勧めるたび、「うちの窯なら間違いございません」と付け足します。間違いは土蔵に積んであるので、座敷には持ち込んでいないだけですが。
「美濃さんの次の普請も、うちへ任せてもらえますな。先の瓦も色が揃っていたでしょう」
「屋根は、まだ見ているところだよ」
「瓦なんぞ、葺いたときに揃っていれば——」
弥七さんの声が止まりました。美濃さんに続いて、わたくしが座敷へ入ったからです。その後ろには、屋根を葺く職人衆と、次の瓦を待つ得意先が並んでおりました。
「和香。何をしに来た」
「本日は、普請のお話と、離縁のお話を」
「離縁?」
「ええ」
わたくしは膝の前へ、布包みを置きました。結び目をほどくと、白く色の飛んだ瓦が一枚、座敷の真ん中へ現れます。
「こんな焼き損じを持ち込んで、何のつもりだ。家の恥を人前へ出すな」
「家の恥でございましたか。これまでは、裏へ回せば分からないと伺っておりました」
「昔の話を蒸し返すな。あれは——」
弥七さんの口が、覚えた形へ動きました。わたくしは先に、その言葉を頂戴いたします。
「では、これから申しますことも、どうか本気になさいませんよう。冗談でございましょう」
弥七さんの笑顔が消えました。
お義母さまが助け舟を探して親方衆を見ます。親方衆は弥七さんを見ましたが、誰も「あの冗談は言っていない」とは申せません。何度も一緒に笑ってくださいましたもの。合唱は、歌わないときにも人数がよく分かります。
「わたくし、弥七さんと離縁いたします。今朝、わたくしの荷はすべて家から出しました」
「待て。夫婦のことを、こんな場所で勝手に決めるな」
「勝手ではございません。四年間、わたくしの仕事は好きでしていたことになっておりました。ならば、やめるのもわたくしの好きにいたします」
「火を見た程度で、職人のつもりか。窯は家のものだ。家の名があるから瓦が売れる」
そのとき、美濃さんが座布団をわずかにずらしました。弥七さんの正面から、わたくしの正面へ。屋根を葺く職人衆も膝の向きを変え、得意先は手元の注文書をこちらへ寄せました。
「家の名じゃない」
美濃さんが申しました。
「火の話を聞きに来た」
親方衆の喉が鳴りました。お義母さまの指が、茶碗の縁から離れます。弥七さんだけが座敷の中央に残り、皆の身体はわたくしの側を向いておりました。
胸の奥で、何かが一枚、ぴたりとはまりました。ああ、これはよい葺き上がり。雨が来ても、もう漏りません。
けれど、ここから先だけは、瓦に換算いたしません。
「わたくしは、四年、夜中に起きてまいりました」
誰も笑いませんでした。
「南の火は、先に落ちます。あとは、屋根をご覧くださいまし」
わたくしは一枚へ手を添えました。土蔵の山を持ち込む必要はございません。これ一枚で、座敷は十分に重くなっておりました。
「美濃さん。先の屋根へ上がらせてくださいまし」
「そのつもりだよ」
「わたくしが一晩だけ火を足した場所がございます」
「上がってごらん」
美濃さんは立ちました。慰めも説得もなく、まず屋根を見る。その背を追って職人衆が腰を上げ、得意先も注文書を持って続きます。
「待て! 普請の話はまだ終わっていない!」
弥七さんの声が背中へ届きました。わたくしは振り返りません。
終わっておりますとも。今しがた、たいへんきれいに。
* * *
窯の火が止まる。
屋根へ上がると、答えは日の下に並んでおりました。葺いた朝には揃っていた瓦が、雨を二度受けただけでまだらに褪せています。南で焼かれた列ほど白み、屋根の一角だけが深い色を保っておりました。
わたくしが一晩だけ、薪を足した場所です。
「ここだね」
美濃さんが深い色の一枚を叩きました。澄んだ音が屋根を走り、隣の色の飛んだ瓦は鈍く返します。
「はい」
「替えは何枚」
「今なら二百八十。次の冬まで待てば四百を越えます。弥七さんへお代を立て替えさせるなら、今がお買い得でございます」
「立て替えさせるんじゃない。焼き直しだ」
「美濃さんは容赦が瓦千枚級ですわね」
「数えるな」
屋根の下では、弥七さんと親方衆がこちらを見上げておりました。先ほどまでの愛想は消え、弥七さんは家の名を繰り返します。
「うちは代々、瓦を焼いてきた家だ。たった一度の色むらで、次の普請まで止められる筋合いはない」
「一度かい」
美濃さんは梯子を下りると、弥七さんの前へ立ちました。わたくしが持ってきた一枚と、屋根から外した一枚を並べます。どちらも同じ、火の足りない白さでした。
「次の普請は、そちらへは回さないよ」
「美濃さん、待ってくれ。今度は薪を増やす。和香に火を見させれば済む話だ」
「和香さんは、もうあんたの家の者じゃない」
得意先が注文書を畳み、弥七さんの前から引きました。
「この色では、うちの分も任せられない。次は和香さんに頼みたい」
屋根を葺く職人衆も、納め時と必要な火加減だけをわたくしへ尋ねました。家の事情を慰める声はありません。仕事の話だけ。ありがたいことに、仕事とは働いた者へ向くとき、余計な情けを連れてまいりません。
「そんな馬鹿な。瓦は土を焼くものだ。誰が見たって同じだろう!」
(瓦なんぞ、土さえ焼けば——)
弥七さんの口は、そこで閉じました。色の違う屋根が頭上にあり、同じ言葉の続きを、もう誰も笑って受け取らなかったのです。
美濃さんの普請が外れ、続いて二つ、三つと得意先が請けを止めました。親方衆だけで夜の火を見た窯は薪を食い、惜しめば色が飛び、増やせば儲けが薄くなります。無料の半刻を失ってから、書付は急に正直になりました。
やがて弥七さんの家では、続けて焼くほどの注文が揃わなくなりました。親方衆が薪を運び込まない夕方、弥七さん自身が窯口の赤を見つめ、鉄の蓋を下ろします。
火が止まりました。
わたくしはその場におりませんでした。見なかった火まで数えて差し上げるほど、もう暇ではなかったのでございます。
* * *
名は裏へ入れる。
「それで、あんたの火に、うちは月いくら払えばいい?」
美濃さんは新しい窯の前で、いきなり銭の話をなさいました。屋根を見て、土を確かめ、窯口の南へ回ってからのひと言です。順序が正しくて、眩暈がいたします。
「月で、でございますか」
「夜ごとに数えると、あんたは半刻をまけるだろう」
「まけません」
「四年まけた」
「それは……家の者でしたので」
「もう違う」
短い。実に短いのに、逃げ道が一枚もございません。わたくしが長々と銭や薪や焼き損じを並べようとしても、美濃さんは三言で屋根まで葺いてしまいます。
「では、薪代とは別に、月でこちらだけ」
指を折って額を示すと、美濃さんは眉を上げました。高すぎたかと喉が縮みます。人様へ値をつけるのは得意でも、自分の半刻へ値をつけるとなると、急に勘定の珠が逃げるのです。こら、戻りなさい。四年間も遊ばせたのですから働きなさい!
「安いね」
「えっ」
「もう二割」
「増やすほうで?」
「減らしたいなら止めないよ」
「増やします。ぜひとも増やさせてくださいまし!」
職人衆が吹き出し、美濃さんはもう書付へ額を書いておりました。笑われても、今度は銭が出ます。同じ笑いでも、ずいぶん景色が違うものです。こちらは瓦三百枚ぶん、喜んで本気にいたします。
借りた窯は小さく、南の口には癖がありました。けれど夜の半刻も、薪を足す手も、初めから仕事として書付に載ります。得意先は「家の瓦を」とは言わず、「和香さんの火で」と注文してくださいました。
最初に請けたのは、棟へ載せる瓦でした。形を整え、乾かし、火を回し、窯から出した一枚を膝へ置きます。表は屋根の空を受ける顔。名は、雨にも人目にも触れにくい裏へ入れます。
へらの先が、まだ柔らかな土へ沈みました。
和香。
二文字でございました。瓦にすれば一枚にも足りません。それでも四年ぶんの夜より重く、わたくしの両手にきちんと残りました。
「曲がってるよ」
美濃さんが横から申しました。
「初めてでございますから、味です」
「売り物だよ」
「では、味の分だけ少々お安く」
「値を下げるな」
わたくしはへらを持ち直し、もう一枚の裏へ名を入れました。今度はまっすぐ。表からは見えなくても構いません。火を見た者が誰か、裏返せば分かる。それで十分でございました。
半年後、弥七さんが窯を訪ねてきました。以前より薄い羽織を着て、入口に立ったまま、焼き上がった棟瓦を眺めます。
「和香。戻ってこい」
わたくしは窯口へ薪を入れました。南の赤はまだ痩せておりません。次の一本まで、あと半刻。
「おまえが火を見れば、うちはまた焼ける。母も、今までどおりでいいと言っている」
「今までどおり」
「ああ。つまらん意地はやめろ。夫婦だったんだ。家へ戻れば、おまえの居場所も——」
「冗談でございましょう」
寄合で返したときと、同じ声の高さで申しました。
弥七さんは何かを言いかけ、棟瓦の裏にある二文字を見ました。手を伸ばしはしません。わたくしも渡しませんでした。
やがて入口から足音が遠ざかります。追えば瓦何枚ぶんの距離になるのか、もう数える気はございませんでした。
「和香さん、次の火は」
「南へ、半刻早く」
「分かった」
職人衆が薪を運び、美濃さんが新しい注文を書付へ置きます。わたくしは棟瓦を両手で持ち上げ、火の届く場所へ並べました。
今度は枚数ではなく、わたくしの名を数えます。たった一つで、十分でした。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
「悪くなかったな」と思われたら、★や感想を残していってもらえると、とても励みになります。
作者ページには他の短編も並んでいます。よろしければどうぞ。




