疑って悪かったな
その日は散々だった。下町の弁当屋のおばちゃんはやたら差し入れに来るし、ヒマなおっちゃん共が野次馬に山程ドルブのおっちゃんの店の前に現れててんやわんやだった……
俺は出来るだけ関わり合いになりたく無かったから意識しない様に気を付けつつ昨夜手に入れたパーツを借りた工具で取り付ける事に夢中になり、気付いたら大分時間が経っていた。
「ふぅ、これで一応走る筈だな。少し休憩してテスト走行しよ。おやっさん!何か冷たいモノ買って来るよ、何が良い?」
「ふふふ、そう言うと思って冷たい紅茶を用意してありますよ?クッキーもいかが?」
ヒィッ!?すぐ近くから女の声が?!
ギギギ…………と油を刺してないマシーンのようにぎこちなく振り返るとアレクサンドラがいつの間にか用意していたティーセットを広げていた。
なんかあの辺だけオシャレな高級カフェみたいになってない?いや行った事無いんだけどさ。雰囲気?みたいなのがジャンク屋のガレージを侵食して来てる………
「そう警戒なさらず、何も入ってませんよ。ああ、お砂糖は少し入ってますが」
「おう!このお嬢ちゃんの淹れたお茶はぶっちゃけ細かい味が分かんねぇから良さとか分かんねぇけどよ!女の気遣いを無駄にするんじゃねぇぜ!ガハハハ!」
ドルブのおっちゃんが豪快に笑いながらガブガブと水みたいに紅茶を飲んでる。
えぇ……湯気が立ってる飲み物をそんな勢いで飲んでよくヤケドしないなぁ。
まあおっちゃんはすぐにジャンク屋の向かいに居る弁当屋のソフィエラおばちゃんに「余計な事言うんじゃないよ!!」って店の裏に連れて行かれたんだが。
あっ、何かを殴る音が聞こえてくる。気付かなかったフリしよ。
◇
〜翌朝〜
イーヤッホー!!今日からバイク通学だ!
いやぁ、地上のアニメの影響でバイクに憧れてたんだよな!
家の前で無駄に金田ブレーキの練習とかしてみたりして。
やっと魔導機関の触媒が暖まった所だぜ!
グングンと加速して工業区画の坂を駆け上がり小綺麗な開発地区に入る。
門番のおっちゃんも顔見知りだ。昔娘がくれたとか言うラジオを直してからは良くしてくれてる。
だからバイクで乗り入れるのも本当は面倒な登録とか必要なんだけど、見逃してくれてるんだ。
まあ今日の学校帰りに役所に行って登録貰って来るかな。
さぁ、これからどこに行こうかなぁ!!
校門前は送迎の車が行列を成しているから、いつもの様に、裏口から校舎に入ろうとすると、裏門の前にも送迎車が止まっていた。
はぁ、しゃーない。どっか行くのを待つか。
「やっと来たか。お前、アレクサンドリアさんとどういう関係だ?」
黒塗りの高級車からイケメンが降りてくる。
確かアイツは同じクラスに居た奴で確かケビンとか言ったか?親父が政府高官とかだったか?この町には現地特派員とかで地上と地底のこの町をつなぐパイプ役だとかなんとかだっけ。
「どうもこうも、昨日の様子を見て分からないか?コッチが聞きたいよそんな事は。アンタはその場の空気とか読むの得意だろ?俺がウンザリしてる事ぐらい分かるだろ。」
「バカにしているのか?なんだその口の効き方は!」
「そりゃ悪かったよ。なんせ育ちが悪いモンで。まあ察しは付くよ。育ちが良いお坊ちゃん達が自分に群がるのが面倒だから俺を風よけにしてるんじゃないの?」
「なに?」
おーっとケビンくん!眉間にシワが寄っている!ツラが良いから迫力あるなぁ。
「俺への態度はお前達みたいな奴らへの当てつけで、俺はその当て馬とかそんなんだろ。マジであの女に覚えが無いからな」
(本当はあるけど無いことにしときたい。というか関わり合いになりたく無い)
フン!と鼻を鳴らしその場を立ち去る。
もうこんなやつに用はないと言わんばかりだ。
向こうから名乗る事さえしなかったな。まあ良い。ワイも仲良くされても気まずいだけだし。
◇
「で、貴女はなんでそこに座ってるんスか?」
今日一日の学生の本分が終わり、さっさと役所に新しい魔導バイクの登録を済ませようと駐輪場に行くと俺のバイクのシートにはアレクサンドリアが跨がっていた。
「貴女なんて他人行儀な………サーシャと呼んで下さいませんか?」
「他に生徒は居ないな……ふぅ………一体どういうつもりだ?」
俺は仕事モードでアレクサンドリアを睨みつける。これからずっと付き纏われたらやってられないからな。目的をハッキリさせないと。
「キッカケは本当にあの夜のファイトだったとしたら信じてくれますか?」
コイツ………演技だとしたら相当な役者だぞ、本当にたまたま見に来て選手が気に入っただけの金持ちの娘とかなのか?いやまあ……マジでその可能性が出て来たな。ローマの休日がしたかったのか?………もしホントにそうなら悪い事したなぁ……
(ヽ´ω`)
「……つっけんどんな態度は……悪かったな。……良かったら乗ってみるか?」
「良いんですか?!」
「ああ、近くをぐるっとぐらいならなにも言われんだろ。疑って感じ悪い態度だったお詫びだ。そういうの(バイク)に興味があったんだな」
「貴方があんなに必死に直してたんですもの!」




