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ミロヴィ・アレクサンドリア

「お断りだ!俺は小遣い欲しさにやってるだけでコロッサスアリーナで身を立てるつもりなんざサラサラ無いからな!!」


 初勝利の後、これで魔導スクーターが買える、その上タナンの手足を直してもお釣りが来るだろうなとルンルン気分で控室に戻ると見知らぬ女が居座っていて「その技量を活かすつもりは無いか?」と言って来た。


 女はミロヴィ・アレクと名乗り、先ほどの試合を見て気に入った事、ゴロツキやチンピラの様な雰囲気は見受けられなかった事を理由に俺の事をスカウトしに来たらしい。


 普通に怪しいし、アリーナのファイターを続けたくなかったのもある。

 が、決定的なのは「最後には私の思い通りになるハズだ」と信じて疑わないあの目がなんか気に入らないんだよな。


 義務教育とやらでお情けで通わせて貰ってる学校でも大企業のボンボンやらベンチャー企業のお嬢様が多いから分かる。この女は“そういう奴側”の人間だって。


 この町……いやこの地底世界は“いびつ”だ。地上人が爆速で開発を続けていて、そこで富を得るのは開発を指示した偉い人と現地の有力貴族だけ。


 そこで作業員として働く親父がマトモに家に帰って来れないぐらいに大変な思いをしてるのに、息子の俺はジャンク漁りだ。だから他人を顎で使ってる様な、指図する側奴には警戒心が先に出るよね。

 まあ世の中そういうモンだとは言うが納得いかないのは俺がまだガキだからかな?


 ただ働いた分金をくれるなら良いんだが、たまたま一勝しただけのジャンク屋、使い潰そうとしてるかもとか警戒して当たり前なんだよね。


 女は残念そうな素振りも見せずにこちらにニッコリと微笑みかける。アニメだと“ドキン”とか胸が高鳴る描写がされそうだけど、俺の場合は背筋に寒気が走ったね。玩具を見つけたって顔をしてるもの。


「しかしあの機体の性能差で勝つのはそこらの人間には出来ません。もし気が変われば連絡して下さい。貴方用のゴブリンを用意してお待ちしています。」


 そう言って俺とおやっさんの前から颯爽と居なくなるミロヴィ・アレク。


 しかしゴブリンか……それはちょっと惜しいな……タナンの戦闘用モデルだ。基本設定は変わらないがフレームや出力も全然違うハズ。くぅぅ、一度乗り回してみたいなぁ!


「ファイトマネーから手首の修理代を差っ引いて……500で良いか?あとオマケでウチにある魔導バイクのパーツ好きなの持っていけ!!」


 ミロヴィ・アレクに呆気に取られていたが、我に返ったおやっさんは胴元から振り込まれたキャッシュを確認すると俺の端末に送信してくる。


 若干すくなくねぇ?とも思うが、まあおやっさんには世話になってるし、これを機にあのタナンを綺麗にするつもりなんだろうな。

 そう思って責めるのは辞めておいてやろう。


「ヨシ!オーカン!今夜は宴会だ!俺の金でパァッと行くぞ!魔獣の肉じゃなく牛の肉食いてぇだろ!」


「マジかよおやっさん!!アンタサイコーだぜ!!」


 俺とおやっさんはスキップしながら埃っぽい町の中に帰って行った。




〜翌朝〜



 あぁ〜学校行くのダルい。ダルすぎる。

 早く帰って昨日の夜におやっさんから貰ったパーツを組み上げたい。

 アレを組み込めば理論上走り出すハズなんだよなぁ、親父のバイク。


 「ねぇねぇ!昨日の夜この町でコロッサスがあったの見た?!」


「見た見た!野蛮だよねぇ〜」


「労働者のガス抜きって名目だけど、あんなので喜ぶ人達なんて怖くない?」


「でも銀閃の貴公子ニコライ様カッコよくない?」


「えー!カッコ良さなら騎兵ヴィルヘルム様じゃないかしら」


「コロッサスなんかより写真集とか作らせたいんだけど、やりたがらないのが残念!」


「私も!ウチで作ってるの下着や服のモデルにって声掛けてるんだけどなかなかね〜」


 通学路を歩いて地上街の区域に入ると、早速昨夜のコロッサスの話題が聞こえてくる。

 まあ俺達みたいな出稼ぎ労働者の子供も居るが、基本的にはデカい会社の御曹司とお嬢様、そして地底世界に居たマジモンの貴族だからな、通ってる生徒は………当たり前みたいに事業展開する話をしてる……まだ高校生やぞ!いやまあ早いに越したことは無いとは言うらしいが。


 さぞかし野蛮な猿が暴れてる様にしか見えないんだろうて。

 あっちでもガラの悪い男どもがコロッサスの話をしてるな?ちょっと聞き耳たててみよう。べ、別にタナンのオーカンの評判が気になるとかじゃ無いんだからね!!


「昨日の参加者で一人だけタナンを使ってた奴居るだろ?顔出ししてなくてオーカンと名乗ってた奴。アレ実はオレなんだよね。」


「マジかよギーマン!お前あんな腕前だったのか?」


 あ、男子はアホっぽいな。

 というか学校通ってるから顔出しNGしたんだが、こんなアッサリと騙りが湧くんやな。




「今日は転校生を紹介します。ミロヴィ・アレクさんです。」


 はいクソー!俺の終わり掛けてた学校生活が完全に詰みましたー!

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