あなたが教えたんじゃない
「アタマは良いが根回しばかりする陰険ヤローが今はこの地底に新しく築かれた学園の学園長とはな。学園でのオーカンの野郎はどうなんだ?」
「一言目でそれですか。ずいぶん父親役も板に付いた様で。少しぐらい、待ち構えてた事に驚いてくれても構わないんですよ?」
ミッシェルはすぐ近くの空き部屋に入ると椅子の下から酒を取り出す。いつの間にか手にしていたカップに葡萄酒を注ぐと一人で旨そうに飲み始めた。
「今は昼間どころか午前だぜ……?いくらドワーフでもあんまり居ねぇぞ?この時間から飲み始めるのはよ」
「何を言ってるんですか?これは“葡萄ジュース”ですよ。じゃあ貴方はいらないんですね?そうですよね貴方方ドワーフが大好きな蒸留酒じゃない葡萄ジュースなんですから」
ミッシェルはさらに服の袖から咲けるチーズを取り出して花びらの1枚をちぎって食べる。
ぐぬぅ、アルコールとチーズ………
◇◇◇
「それで鉱山都市ダンベルドに着くまでに数日かかるからその最中に艦内でお勉強とは………学生の本分とは言えなぁ」
俺は講堂の端っこでテーブルに突っ伏して内職を続ける。レッドキャップの改善案とそのシステムと魔術回路の最適化をシミュレーションしていると隣のミーシャさんに叩き起こされる。
「あなたに取ってはよく知る事でも私にとっては知らない事なんです。真面目に話を聞いている横で面倒臭そうにされたら良い気分しないでしょう!シャッキリしなさい!」
ミーシャさんはタブレットに表示された魔工学のページを開いている。え〜と、魔工炉の構造ね。
「簡単だよ。細かい専門的な話までは授業じゃどうせやらないしね。魔法金属に魔術を流してお湯を沸かしてタービンを回す。コレだけ分かってれば動力の所は無問題よ」
「地上じゃ原子炉ってのがあるんだろ?それの魔法版。魔力を放つ金属を圧縮精製した燃料棒に発熱の魔術回路を刻んで水中で発動させる。それだけ分かってれば動力のポイントは十分だよ」
「それって、この船の動力がどうとか言ってた“オリハルコンドライブ”の事?」
「あぁ、そうさ。地底の都市に地上人が開拓しに来て最初に見つけた魔法金属オリハルコン。それの振る舞いが地上で言う核……放射性物質みたいだったから似たような事が出来るか試して、上手く行ったらしい」
「核………私はあまり好きになれないわね。地底とコンタクトするきっかけとは言え多くの人が死んだんでしょう?」
ミーシャの顔に影が差す。まあ、地底と繋がって魔力で放射能を中和出来るようになる前は何をしても消せず、減退するまで地下深くに埋めるしか無いモノだったらしいからなぁ(´・ω・`)
「そうか?でも核が無けりゃ生活が成り立たない世界に当時既になってたんだろ?あの頃の電力エネルギーはほとんど核が賄っていたそうじゃないか。どんな物でも使いようで核が悪いんじゃなくてそれを使った爆弾を落とした奴が悪いのさ」
急に具合が悪くなったのかしんどそうにうつむくミーシャ。
あ、やべ。地雷踏んだか?だって地底と繋がったのは50年前、いくら俺達が生まれる前とはいえ両親や祖父母がその被害に合ってる可能性はあるもんな。
「わ、悪かったよ配慮が足りなかった。ちょうど休み時間になったし何か飲み物を買ってこようか?」
ミーシャは何か嫌なことを思い出した様な状態だ。
やだなぁ、可愛い女の子はふふーん!みたいな感じで楽しそうにして欲しいよね。
「………じゃあ、あまり普段は飲みませんがあなたが気分をさっぱりさせる時にはコレに限ると言っていたコカコッカーのパチモンみたいな飲み物を」
こら!いいとこのお嬢様が「パチモン」なんて悪い言葉を使うんじゃありません!!
「ふふっ、あなたが教えたんじゃない」
俺はDr.花椒が無いかと食堂を探しに向かった。
◇◇◇
俺は道に迷った!!
ここはデカい船だと言う事を失念していた。
狭い通路や曲がりくねった階段などを「たぶんこっちちゃうか?」と突き進んで行った結果ひとけの無い場所に出ちまった!
ん?なんか聞き覚えのある声が聞こえる……
いやいやまさか、ドブルのおっちゃんがこんなトコに居るわけ無いやろ。たまたま声が似てるだけのドワーフ違いだろ?
しっかし昼間から酒とは………一応学園の職員じゃないんか?この船は学校の持ち物だしさ。
「すんませ〜ん、ちょっと道に迷ったんスけど食堂ってどっちにあります?あとDr.花椒置いてます?」
ガチャリ、と部屋に入ると学校の式典時に遠目で見た事しか無い学園長がドブルのおっちゃんにダル絡みしていた。
「学園長なんてェ〜引き受けるんじゃァ無かったッ!!その点良いよなぁ〜憧れのソフィアさんの近くで好きな事して暮らしてんだからさァ〜」
「あっ、オーカンちょうど良いトコに来た。代わってくれ!!」
えっ?




