バカばっかりで頭が痛い
〜ケビン視点〜
コロッサスは俺の優勝で終わった。
当然だろう。俺は強いのだから。
だが、あのオーカンとかいう下民の反撃で「終戦剣ラグナロク」が破損してしまうという失態をしてしまった。
あんな野良犬が一瞬だとしても俺の剣に拮抗したなどと認め難い!!だが事実としてラグナロクは欠け、罅が入り魔力の通りが悪いナマクラになったのだ。こんなみっともない剣なぞ振れるものか!!
「クソッ、いつになったら完璧なフェンリルになるんだ」
俺はテーブルにカップを叩きつける。
紅茶の入ったカップが割れて、部屋の隅に控えていたメイドが青い顔をしながらも音もなく破片を回収しテーブルを拭く。
「ケビン様、今度の学園の授業でダンベルド鉱山街に行くではありませんか。あの街はオリハルコンやミスリル等の魔法金属の産地でございます。さらに鍛冶師も高名な者が何人か居ます。ラグナロク程の剣を修理出来るとなると、ケトベドルという鍛冶師がギブラニアの武器、それも特殊な力を持つ魔装の類を扱えるそうです。接触の後に取り込みますか?」
ケビンの背後に控えていた疲れた顔の男が下調べをして得た情報には満足だ。やはりメイヨは役に立つな。流石父上が買ってくれた俺の奴隷だ。
「メイヨ、お前は使えないな。そこまで分かって居るなら何故その男とオリハルコンをここに持ってこさせ無いのだ?俺の方から出向けと?ナメているのか!この俺を!!」
「いえ!魔法金属はレアアースよりもさらに貴重で取り扱いには何重もの監視があり、軍等に見つかればいくらケビン様でも無事では済みません!ですので“学校の授業のついで”を装って行くのが手堅いかと!!」
ほら、このメイヨの様に震えて平服し、許しを乞う態度こそ、下民が俺に向けて良い唯一無二の姿勢なのだ。
それをあのミーシャとかいう女は俺を相手にせず!下民はあろうことか不意打ちとは言えど俺のフェンリルの鼻をへし折ったのだ!!
絶対にこのままでは終わらせぬ………衆人環視の中であの女と下民を徹底的に貶め、魂を凌辱せねばこの怨念は晴れんぞ!
「軍は確かに面倒だな。監視が着くのも鬱陶しい。であるならば、俺が視察に行った時に話がスムーズに進む様に手を回しておけ。俺はもう少し剣を振ってくる。」
紅茶が跳ねた汚い服をその場に脱ぎ捨てて部屋を後にするケビン。
その背中には、じとりとした視線が2つ、突き刺さっていた。
◇◇◇
〜シノブ・カミヌマ視点〜
クラスに銀髪青目の、まるで絵本の中のお姫様みたいな人が転校して来たの。
でもその娘はケビン・アムスベルクの興味を引いたみたいで初日から声を掛けてたみたい。
あのケビンみたいに家柄も良くて成績優秀スポーツ万能のハイスペック男子に声を掛けられるだけでも、これまで同じクラスに居たのに声を掛けられなかった私をバカにしてるのに、さらに酷い事に皆の前で出稼ぎ労働者の子供と楽しそうにしていたのよ!
そうやって皆で私をバカにして私の事を尊重しない!母さんはフェミニズムをこの地底に浸透させる為に私を連れてこの街に来たのに、この街は誰も意識をアップデートしようとしてないの?
ホント、バカばっかりで頭が痛いわ。
なんで文化交流なんて名目で野蛮な地底人やそんなのと同じ生活をしてる開発の為の出稼ぎ労働者の子供を学校に受け入れているのか、ここの校長は頭が悪いんじゃないかしら?
私は母さんから「地底には社会勉強だとか行って大企業の役員が子供を連れて来てたり、貴族社会が残ってるからそこの嫡男が居たりするのよ!そういう強者男性を捕まえなさい。そうすれば貴女はホンモノのお姫様よ!もうその呪いの様な名前の様に我慢しなくて良いの。分かったわねキララ」っていつも言われてるもの。
あぁ、シノブなんてババアみたいなしけた名前は母さんの意向を無視して精子提供者の男が勝手に届け出た名前なのよね。ホントムカつく
早く改名したいけど、それには日本の裁判所に行かないとダメらしくて。でもいくら母さんでも気軽に地上と地底を行き来出来るワケじゃないの。
だから母さんが言うような強い男の女になって早く地上に帰らなきゃ!
青春は短いのよ!その大切な期間をこんな名前でずっと過ごさなければいけないなんて反吐が出るわ!
「あぁ、そういえばギブラニアとかいうおもちゃを理解するため、なんて言い分で鉱山なんて埃臭い所に見学しに行くらしいわよね。その時にケビンを私のモノにしましょ。あのミーシャとかいう女が悔しそうにする顔が目に見える様だわ!!」
アタシは顔に貼り付けていたパックを剥がすとローラーで全身をマッサージを始める。
あの男に媚びるしか脳のない胸と身体の女はアタシの邪魔なのよ!!
そうだ。地底は治安が悪いって話なんだからたまたま《・・・・》あの女の近くで落石とか起きないかしら?
あんな女なんて邪魔なだけだしね。




