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ジャンク屋の少年

「せめてもうちょい状態の良いのがあればな、俺専用の魔導バイクが組み上がるのにさ」


 スクラップのパネルを開いても中もほとんど使えねえガラクタばっかり。

 地上人のお下がりを使ってる、偉い空洞人のそのまたお下がりを使ってる、一般人のガラクタなんて酷使されすぎてて無事な部分を探す方が難しいなやっぱ。


 あーあ、親父が見せてくれた地上の「ロボアニメ」みたいにすんげーギブラニアが目の前に降って湧いてそこからの大冒険とか無いもんかねえ。こんなジャンクの山じゃあロクなのねーよ。


「おーい、オーカン! なんかあったか?」


「使い物になんねえ瓦礫なら山程!」


「そりゃ結構だガハハ!お前さん、親父さんはいつ帰ってくるんだ?」


 ドルブのおやっさんまたなんか企んでるな?小遣い稼ぎに俺も巻き込もうって魂胆なのはみえみえなんだよ。今度は何やらされるんだろ、小遣いくれるならドブさらいでも何でもやるけどさあ。お金無いから。


 瓦礫の山から飛び降りるとおやっさんは1枚のチラシを見せてくる。


「コロッサスアリーナって知ってるか?まあ知ってるよな。お前の大好きなギブラニアを使ったケンカだ。そのプロモーターが今度この町で試合を組むらしいんだよ。おめえ試しに出てみないか?なあに、よっぽどじゃなけりゃあ死にやしないし、一発当てたらひと月、いやふた月分の飯の種が稼げるんだ。やらない手はないぜ」


「そりゃあ興味はあるが、俺は自分のギブラニアなんて持ってないぞ?何いってんだジジイ」


「だから俺と組もうって言ってんだよ。俺がスポンサーになってやる。ウチのタナンを貸してやる。」


 タナンってもう40年ものの型落ちも型落ち、最初期のギブラニアじゃねえか。そんなんで出場したって良い笑いものになるだけじゃないか。まあ、このおやっさんの事だからそんなこったろうと思ったけども。


「草試合だが選手発掘も兼ねてるらしい。向こうの街じゃあ上位5人がそのままプロモーターに引っこ抜かれて王都に連れて行かれたって話だ。良いよなあ王都。いっぺん行ってみたかったんだよな。」


 このジジイもう勝った時の事を考えてやがる。まったく仕方ないな。


「で?いつなんだそれは?」


「今夜♡」


「ふざけんなクソジジイ!!今すぐ倉庫に戻ってタナンの魔力の残り確認して足回りの感じも確認し直してそれから⋯⋯ああもう早く行くぞ!! 」




 で、俺達は今町外れの未開発エリアに来ている。


 いつもならこの時間にこんな寂れた場所なんて誰も居ないのが普通なんだろうが、今は人人人、この町のどこにこんなに人間がいたのかってぐらいのどんちゃん騒ぎのパーティー会場に様変わりしている。中央には簡易的に作られたお立ち台、その上にはギラギラと輝くサングラスを掛けた派手な男がほとんど裸みたいな半裸のねーちゃんを両脇に従えてマイクを握っている。


 「レディース&ジェントルメーン! 今宵はこの町でコロッサスアリーナを開催することになった、ミスタアアアアアア!! コロシアムッ! だァ! 今夜この時の為に! この町での参加者を募ったところ、130人程の命知らずが名乗りを上げたぁ! 早速第一試合の発表だ!1人目は町の暴れん坊、ゴロツスキー!そして対するは……」



…………始まっちまった、心臓がバクバクと鳴り止まない。このポンコツタナンでどこまでやれるか、一応いつも仕事の手伝いで乗ってるから扱いには慣れてるけど、作業させるのと戦うのは全然違うだろうしな。


 でも金を貯めて俺はいつかこんな治安が終わってる場所を抜け出してアニメで見た日本で暮らすんだ。作業員の子供だからって馬鹿にしてくる親がエリートなだけな奴らと顔を合わせないですむ世界に行くんだ!


「ようオーカン、呼ばれたらすぐに行けよ。そんで遠慮なく暴れまわってやれ。お前のテクに俺は太鼓判おしてんだからな。」


「28番、オーカン、出番だ。ゲートに来い」


 ヤバいヤバいヤバい! 一瞬で出番が来ちまった!ハラ括るしかねぇ! 


 俺はタナンを操作してゲートをくぐり円形に形作られた広場へと進める。目の前に居るのは横流し品と思われる戦闘用ギブラニアのボクスル。さらに全身にカスタムが施されている。

 

 察するに魔獣狩りなんだろうな。魔獣というか厳密には魔力を持った恐竜らしいんだけどさ。地上には魔獣も居ないんだろ?一度クソ寒くなったせいでうんぬんって学校で習ったし。いやいまは関係ないか。緊張してて他の事を考えてないとしんどいんだよ。テスト前に部屋の掃除したくなるあの心理やね。


「ハハハハァ! 場違いな勘違い野郎が居るぜぇ! このタナンが相手なのか?てっきりウォーミングアップ用のデモ機だと思ってたけど対戦相手かよウケるWW いまから俺のスクラップ解体ショーを初めたいとおもいま〜す!!」


 ピキリ。相手のボクスルの操縦手が煽って来た。いくらボロいからっておやっさんの大事なタナンだ。なんども作業させたしその度に大事に手入れしてきたんだ。自分達で笑い話として言うのは良いが、俺達の事をナメてる他人にスクラップと言われたらハラが立つってモノよ!


「ああ、そうだな。このタナンはスクラップみたいなモンだ。けどな、ナメてるとこのスクラップは痛ぇぞ?」


 タナンのカメラ越しにボクスルをしっかりと見据える。


 試合開始を告げる拳銃が乾いた銃声を挙げると同時に、俺はタナンを走らせた!

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