世間は意外と狭いなぁ
ここは………
俺が目を覚ましたのは貴族の子女が集まるサロン……にしてはこじんまりしてるな。なんだここは……
「あら、目が覚めましたか?グレイくん。お久しぶりですね。」
ッ!!
声に聞き覚えがある。確か姉さんとよくお茶会をしてた人間の……
「サーシャさん………?俺は何でここに………サーシャさんですよね!ハイラ姉さんの友達の!」
あぁ、その青灰色の瞳、プラチナブロンド、見間違える筈がない。サーシャさんだ!サーシャさんが助けてくれたのか!
「そうだ!ハイラ姉さんとミリムを!2人を助けて下さい!俺に出来る事なら何でもやりますから!!」
「う〜ん、助けられたお礼より先に姉と妹を助けてくれ。ですか。私は叱れば良いでしょうか?褒めれば良いでしょうか……」
「そりゃあアレよ。ありがとうだろうよ。まずはさ」
ガチャリと扉が開いて俺に粥を食わせた男が入って来た。ひょっとしてサーシャさんのボディガードだったりしたのだろうか……悪い事したな。
「あの……オーカンさんでしたっけ。お粥、助かりました、ありがとうございます。代金は働いて返すので働き口と追加のお粥を貰えませんか?」
◇
ハイカとミリムの隠れ場所〜
「ヒャッハー!女だぜ女ァ!しかも上玉だぁ!」
「しかもコイツらエルフだぜエルフ!変態どもに高く売れそうじゃねぇか!」
街を荒らすギャングの山猫団のボスであるヤマネが昼寝しようとたまたまフラッと入った廃屋に良い服を着たエルフの女が2人、フラフラの状態で居たのでこれは儲け物だと盛り上がっていた。
「ン〜〜〜〜どうちたのかなおじょうちゃ〜ん?さてはエルフ狩りにでも会って逃げて来たのかなぁ〜だったらおじさんがいいとこに連れて行ってあげるよ〜」
ヤマネが猫なで声でハイカとミリムに取り入る。
「わ、私はハイカよ……アンタも商売するつもりなら…………商品を磨くぐらい………しなさいよね………」
ハイカは脂汗をだらだらと垂らし、明らかに調子が悪い事をヤマネにアピールする。
「アンタだって………ボロボロの肉と……新品の肉……どっちが食べたい?……って話なのよ……」
「今すぐ……私達を売り飛ばす……のと、………太らせて……元気にしてから売るのとじゃ……違うぐらい分かるでしょ?」
ハイカのその言葉にヤマネは頷く。
「なるほど、確かに。綺麗な方が値段が付くよな……おい!水と食い物持って来い!あと服も洗濯してやれ!え?着替え?…………そこら辺のガキひん剥いて持って来い!」
ヤマネはハイカの言う事にも一理あるなと思い、部下に指示を出す。部下もそれに「へい!」と元気良く返事をすると下町のある方向に走って行った。
(誰か知らない人、ごめんなさい。今は私が生き残る為に服を奪われるのを見過ごします………)
ハイカの腕の中でミリムが震えながらもパンをかじる。
「お姉ちゃん……かたい……」
「少しずつ、少しずつちぎって食べなさい。あの男達は単純だから騙せましたが、ずっとこのままという訳には行きませんから。残さず少しずつ食べて力に変えなさい。」
「おやびん!十歳ぐらいのガキひん剥こうとしたらロリコンだっつって子供ギャングみたいなのが出て来たよ!どうする!」
「あん?そんなの俺のリンクスで脅せばイチコロよ!」
ヤマネはギブラニアリンクスに乗り込むとその細い体躯を伸ばす。
近所の小さい女の子の服が奪われたからと追いかけて来ていた子供はリンクスを見上げてニンマリする。
「うわぁ!ガキの服を盗むたぁシケた山賊かと思ったら!ギブラニア持ってんじゃん!!」
子供は懐から笛を取り出すと全力でビィィィィ!と3回吹いた。
ビィィィ!ビィィィ!ビィィィ!
ビィィィ!ビィィィ!ビィィィ!
「ガキが!何か呼びやがった!」
「おやびん!下町じゅうから笛の音が!」
「ナメた真似しやがって!!死ねやクソガキィ!!!」
リンクスがその細い腕の先に付いている鉤爪を子供に振り下ろす。
ガキィン…………!
「おい!さっさとずらかるぞ!用心棒みたいなのに追い回されるのも面倒だ!」
ヤマネがリンクスの爪を持ち上げると、叩き潰した筈の子供が下町の方へ逃げていくではないか!
ふと足元を見ると男が一人鉄骨を手に立っていた。
「てめぇ!生身でギブラニアの攻撃を?!」
「ここ最近、いろいろ振り回される事があってイライラしてんだ」
「こっちが聞いてるだろうがボケが!てめぇのいら立ちなんて知ったこっちゃねぇんだよ!」
もう一度男に鉤爪を振り下ろす。
「そうなんだよ!だから俺の憂さ晴らしに付き合ってくれよなァ!!!」
鉄骨をリンクスの爪に振り下ろし、手首に叩き付けボロボロにすると足首を華麗なバッティングでへし折った。
「いつもは部品取りの為にほどほどにするんだが、今日はベコベコにしても良いよなァ……ああッ」
ひっくり返ったリンクスの頭部に鉄骨を突き立てるとカメラも中のメカもぶち抜いて後頭部から鉄骨が現れる。
それを見たヤマネの部下は蜘蛛の子を散らした様に逃げて行き、運転席のドアを引き千切る音が聞こえたヤマネは両手を上げて涙を流していた。
「ここまでか………なんだこのバケモノは……」
廃屋の中に居たハイカは耳をつんざく様な破壊音を耳にし、たまらず出て来ると、男がヤマネを掴み運転席から引き摺り出していた。
いくら自分を売ろうと言っていた男でも水と食料をくれたのだ。ここでヤマネを殺すのを見ては居られないとハイカは叫ぶ。
「辞めなさい!!!その人は私達に水とパンを分けて下さったのです!!無益に殺すなど、騎士道にもとる行為です!悪人であるというのなら法の裁きを受けさせるのです。個人的な恨みで殺してしまえば貴方も山賊と同じです!!」
男はじろりとハイカをねめつける。
「……アンタがハイカかい?」
「ええ、ハイカ・カーボ……いいえ。ただのハイカと言います。お見知り置き。お強い人」
「なあに、アンタ程強くは無いさ。グレイの姉ちゃんだな?サーシャが探して来いと煩くてな。付いてきてくれ」
「グレイ?サーシャ?!貴方何を知っているの?!」




