食べたい!!
グレイ視点〜
父様と母様が俺達を逃がしてくれてからどれだけ歩いただろうか……街道を避けて歩き、時には魔獣に追われ、やっと付いたドワーフの多い街。
ここなら身を隠せるし魔獣もやって来ない。姉様はここまで来るのに魔法を使い過ぎたのか、緊張の糸が切れた様に熱を出して寝込んでしまった。
いままで森では姉様に頼りっぱなしだったからこれからは俺が二人を支えるんだ!
と言っても、身寄りの無い綺麗な女の子がフラフラしているとどうなるかぐらい分かっている。この街の治安もあそことそう変わらないだろうしな。
ガキの俺を雇ってくれる所なんて無いだろうし、仲間を作るにも姉様とミリルの事がバレたらどうなるか分からない。信用を築く所から始めなければ……
どうしようか、ままならないな。と街を歩いているとパッと見で分かるピカピカの魔導バイクにパッとしない人間の男が乗っているのが見えた。
俺と同じぐらいのガキにバイクを自慢してるのか?
自慢するぐらいなら価値があるんだろ!
気がついたら魔導バイクに飛び乗ってスロットルを全開にしていた。
これでも馬の扱いは上手だってお父様にも褒められた事があるんだ!
でもすぐに俺にバイクを引っ盗られたマヌケが笛を吹くと辺りからわらわらと同じぐらいの年のガキが出て来て進行方向に木箱を置かれたり縄を張られたりして、それを躱す為に何度も進路変更をさせられた。
誘導されていたと気付いた頃にはガランとした倉庫の前で地元のガキに取り囲まれていた。
どうしようどうしよう!俺が何とかしないと姉様とミリルが!新品のバイクならお金になるだろって反射的に飛びついちまった!俺はバカか!
バイクから俺を引き離す為か何度かぶん殴られて地面に転がされる。埃っぽいコンクリートの匂いが鼻をつき、じんわりと冷たさが体温を奪っていく。
しばらくすると最初にバイクに乗っていたパッとしない人間が現れた。
「あちゃあ……逃げられない様にするだけにしとけっつったのに。やり過ぎだぞお前ら」
緊迫した雰囲気に不釣り合いな間の抜けた声、コイツなんてどうにでも出来るって感じがするな。反吐が出る。どうせ父様や母様を狙ってた奴らと同じ様な奴だろ。
「それでお前……名前は?この辺の奴じゃねぇよな。昔から居たならマルクを知らないハズが無ェし。……流れて来たのか?親か兄弟は?」
まさか姉様とミリルを狙って……ダメだダメだダメだ!2人は俺が守るって父様と約束したんだ!!
「まあ待てお前ら。そうだな、自己紹介といこう。俺はユキジオーカン、こいつらに懐かれてるだけの修理屋見習いだ。お前は?」
コイツ………自己紹介だと?そうやって仲間ですってフリすると俺が気を許すとでも?!バカにすんな!………でもここからどうすれば生き残れる?……
「ハラ減ってねぇか?オイ!誰か薬屋の婆さん所から草粥作って貰って来い!胃にやさしい奴だぞ!すきっ腹に肉は良くないからな!!」 「ヘイッ!!」
俺をぶん殴ってたガキの1人がサッとその場から消える。薬っ………?麻薬か?もしかして俺がエルフの情報を持ってないか吐かせようとしてるのか?姉様、ミリル、ごめん!!俺がヘマをしたばっかりに!!
「おっ……オレは……グレイ……だ。俺だけで盗もうと……したんだ!」
「だから……なんでもするから……許してくれ……ッ見逃して……ください……」
「オーカン!婆さんの特性草粥だ!エルフのガキだって言うからニンニクや唐辛子は抜いてあるってよ!!」
俺をぶん殴ってた1人がすぐに帰ってきた。その手には湯気が立つどんぶりが乗っていて3日も何も食ってなかった俺は一瞬、食らいつきたくて気が狂いそうになる。
「妙に早いな、残り物とかじゃねぇだろうな」
「店の前で爆走してるのを見かけた時から作り始めたんだとさ。」
「マジかよ。お人好しだな。よくあんな所で生きて行けるぜ」
「オーカンがそれを言うのかよ!」「ババアもアンタだけには言われたく無いだろうぜ!」「違いねぇや!!」
倉庫はガハハハと笑い声に包まれる。
どんぶりを俺の前に持ってきたユキジトドはニヤリと笑いながら粥を差し出して来た。
「さぁ、グレイ。食うんだ」
な、何が入ってるか分からないから食いたくない!!でもお腹が空き過ぎてもう気が狂いそう!!食べたい食べたい食べたい食べたい!!
それに食わないと何をされるか分からない!怖い!!
「ひっ………ヒック………姉様、ミリル、ゴメンッッ!!」
小さく2人に謝ると草粥を一気に流し込む。
緊張で味なんて分からなかったけど気づいたら空のどんぶりが目の前にあった。
そしてクソガキ共とユキジオーカンの前で俺は意識を失った。




