成金令嬢、知恵で学園を乗っ取る?
地理学の授業が終わると、マチルダは万年筆を片手に勢いよく席を立った。
「アナ、さっきの発言……あれは完全に特集級だったわ。許可をもらえるなら、今日中に編集部に原稿を送って、特集を組みたいのだけれど、いかがかしら。」
マチルダは鼻息を荒くして、アナスタシアに熱弁する。
「特集名は、『王国の未来を読み解く地理学』。あなたの発想を中心に構成するつもりよ。お望みであれば、名前は伏せるわ。」
その言葉に、アナスタシアは少し考えてから微笑んだ。
「――構わないわ。それがこの国のためになるのなら、喜んで。」
すると、横からルーシーがひょいと首を突っ込んできた。
「ってことは、月刊誌に『成金令嬢、ついに学園を動かす!?』とか書かれちゃうわけ?」
マチルダも便乗して、にやりと笑う。
「それより、『冷酷な成金令嬢、知恵で学園乗っ取り中!』の方が話題になるのではないかしら?」
「ちょっと、どっちもやめてほしいわ!」
苦笑するアナスタシアの肩を、ルーシーが愉快そうに叩く。
「ま、でも本気でカッコよかったわよ。やるじゃない、アナ。その様子じゃアメジスト寮は、つまらなかったでしょう?」
「つまらないもなにも。記憶にさえ残っていないわ。」
3人の少女の笑い声が、廊下に軽やかに響いた。
数週間後、マチルダが企画したこの特集が、この国と学園に思わぬ波紋を呼ぶことになるとは知らずに――