第93話 『バックヤードに迫る危機』
その頃、コンビニのカウンター付近
「ちょっとバックヤードに行ってくるのじゃ! 後は任せた!」
ローザはレジ横でヒナタさんにそう言い放ち、颯爽と裏へ行こうとする。
しかし次の瞬間――
ガシッ。
「グエッ!」
カエルが踏まれたかのような声をあげ、ローザは襟首をヒナタさんに掴まれた。
「唐突にバックヤードって……まさかサボろうとしてるんじゃないわよね?」
ヒナタさんの目が細くなる。
「め、め、滅相もないのじゃ! なぜか行かねばならん気がするだけなのじゃ!」
ローザの言い訳はあまりにも苦しすぎた。
「それをサボりって言うのよ」
冷たい視線を放つヒナタさん。
そこへ、カインが戻ってきた。
「ちょっとカイン君! ローザさんがサボろうとしてるんだけど、何とか言ってよ〜」
ヒナタさんが声をあげる。
「丁度よい! ローザよ、ついてこい!」
カインがローザの襟首を摘み、そのままバックヤードに向かおうとする。
「ちょっと! 二人して何考えてるのよ! もう!」
ヒナタさんの背後に、なぜか魔王の気配が一瞬だけ漂った。本人は記憶がないため気づいていない。
「ち、違う! 焼き芋の準備に人手が要るからだ! 断じてサボりではない!」
カインは若干ビビりながら必死に言い訳する。
「まあ、それならいいけど……ローザさん、早く戻ってきてよね。さっきトラックで荷物が来たから、品出ししないといけないんだから」
「解ったのじゃ! まかせるのじゃ!」
カインとローザは無事バックヤードに到着。
「こっちから何か怪しい気配がした。ローザも感じていたか?」
カインが低い声で尋ねる。
「うむ……小物っぽいが、この世界にはいない気配なのじゃ」
ローザも真剣な顔になる。
「手分けして探すぞ」
「解ったのじゃ!」
そう言って周囲を探していると――
カタカタカタ……
「むっ! カイン、あれじゃ!」
ローザが指さしたのは、陰干ししていたサツマイモのひとつ。明らかに異常な揺れを見せていた。
「どう見ても怪しいな……」
「ま、まさかあれはサツマイモか!」
「いやサツマイモだろう」
「そんなことは解っておる! 問題は中身なのじゃ!」
ローザの顔が引きつる。
「ありゃ“サツマイモの妖精”みたいな奴じゃ。刺激すると……屁に似た臭いを大量に撒き散らす。芋だけにな」
「ウゲッ! ……一二三先輩が呼んでる気がするな、先に戻るぞ」
カインが逃げ腰になる。
「待つのじゃ! もし臭いが店内に広がれば、ヒナタさんにどんな影響が出るか解らん。二人で対処するしかなかろう!」
「くっ……仕方ない!」
カインは覚悟を決めた。




