第87話 『イナゴ型魔物、第二波』
しばらくして――。
ざわざわと地面が揺れ始め、イナゴっぽい魔物の群れが村の畑を埋め尽くすように押し寄せてきた。
「第二弾のお出ましじゃな。行くぞ、二人とも!」
ローザが堂々と宣言する。ふわっと魔力をまとうローブ姿は、妙に頼もしく……いや、どこか芝居がかっている。
「ワシも一応、魔法の心得がある。取り逃したやつは鳥たちに任せて、主力はワシがもらうとしよう!」
「で、この“聖なる菜箸”で敵を倒すって……どうやって使うんだ?」
一二三先輩が菜箸を見ながら首をかしげる。「まさか唐揚げ串みたいに勝手に飛んでいくのか?」
「我も知らん。店長が渡してきたんだ、なんとかなるんだろう」
カインがやる気ゼロの声で答えた瞬間だった。
――ゴオォォ……!
カインの持つ唐揚げ串が、突如として彼から黒いもやもやを吸い上げ始めたのだ。
「うおぉぉぉ!? なんか知らんが気持ちがスッキリした! これ、デトックスか!?」
次の瞬間、唐揚げ串たちは宙に浮かび上がり、イナゴ魔物に向かって光の速さで突撃を開始。見事に串刺しにしていく。
「むむ……人の怨念や黒い感情を糧に動く魔道具か……?」
ローザが腕を組み、魔道具オタクの顔になる。
「確か、最初に動き出したのはゴミ出しの時だったな。店長の血を吸って呪われたとかどうとか……本人は“聖なる異物”とか言ってたが、どう見ても呪われた串だよな」
カインが真顔で言い切る。
「人の血を吸って動く……なんか昔、聞いたような……いや気のせいか?」
ローザが考え込み始めるが、その横で一二三先輩がぽつり。
「ところで俺の出番は? もう敵、全部倒されたんだが?」
視線の先では、ローザの操る魔物の鳥たちが、イナゴ魔物の死骸を次々と食べていた。どう見ても自分の体より大きい魔物を、羽根ごとバリバリいっている。
「ローザよ……あの鳥たち、なんでそんなに食えるんだ? 鳥の食事ってレベルじゃねぇぞ」
カインが思わず突っ込む。
「一応、操っとる鳥は魔物の一種だからな。食ったもんを魔力に変換してるんじゃ。じゃなきゃ、魔力なしの鳥なんて操れんわ」
「さすがです師匠! ぜひ俺にも魔物を操る術を!」
一二三先輩の目がキラキラしている。
「教えてもいいが……対象より魔力がなきゃ操れんぞ。小鳥にも勝てんかもしれんがな」
「プププ……小鳥より魔力がない……ぷぷぷ……」
カインが小声で笑いをこらえきれずに呟く。
「おい! そこ! 全部聞こえてるからな!」
一二三先輩が真っ赤になって怒鳴った。




