第82話 『休憩室にて』
「一二三君、仕事に戻ろっか?」と店長。
「俺だけ? カインは?」と一二三先輩。
「ヒナタさんと藤咲さんとローザ君だけじゃ万が一の時に対応できないし、カイン君にはヒナタさんの意識が戻るまでは一応残ってもらう」
「万が一って物騒な! 魔王なんて我には対応できんぞ!」
「大丈夫大丈夫! キットダイジョウブダヨ〜」
「何で最後だけ片言なんだ! 不安しかないわ!」
ブツブツ言うカインを置いて、店長と一二三先輩は仕事に戻って行った。
静かになった休憩室で、カインはため息をつきながらローザに言う。
「……あれだけ前振りがあったのに、なぜ連れて行くんだ。信用も無くすし、暴走したヒナタさんで痛い目にも遭っただろうが。今後は人の言うことを聞け」
「ま、まあ、本人も懲りてるみたいだし、その辺で許してあげてください」
藤咲さんがなだめる。
「だがな、万が一記憶が戻って魔王が普通に復活してたら大変なことになるんだぞ!」
「聖女の勘ですが、きっとヒナタさんは記憶が戻っても大丈夫です。前世みたいに暴れたりしないと思いますよ。こちらの生活、毎日楽しそうですし」
「だ……ダメなのか? 記憶が戻っても魔王様は復活しないのか?」ローザが恐る恐る聞く。
「ほら、まだ懲りてないみたいだぞ」カインが藤咲さんに視線を送る。
そうこうしているうちに――ヒナタさんがむくりと起き上がった。
「あれ? 私、寝ちゃってた? みんなも休憩? ……なんかスッキリした目覚めだなぁ。カラオケで大声で歌った後みたいにスッキリしてる!」
その様子に、カインと藤咲さんは心の中で同時に思う。
――良かった。いつものヒナタさんだ。
そしてローザだけは頭を抱えた。
「ワシはサンドバッグみたいなもんなのか……」




