第76話 『ローザ公園に行く』
食事を終え、ローザが満足げに腰を伸ばした。
「ふぅ〜満足満足。こちらの世界の食事も堪能したことじゃし、そろそろ帰るとするかのう」
その言葉に、カインがすかさず突っ込んだ。
「いやいやいや、お前は目的を忘れてないか? コンビニでヒナタさんと働くため、この世界の常識に慣れるのが目的だろ。食って帰っただけじゃ、ただの観光客だぞ!」
「……あっ、そうじゃった!」ローザは手をぽんと打った。「魔王様の記憶を安全に戻して、この世界と向こうの世界、両方の危機を救うのが我らの使命じゃった! なんじゃ、まるで我ら勇者パーティーみたいじゃの!」
なぜかやたらウキウキしながらローザが言うと、藤咲フィアナが微笑んだ。
「確かにそうですわね。私も、友達のために動いたら世界を救うことになるなんて……なんだか不思議な気分ですわ」
「とりあえず公園でも行ってみるか?」一二三先輩が提案した。「師匠は虫を操っていたくらいだし、こっちの虫とかも興味あるだろ」
だが、カインが首を傾げた。
「いや待て。最初は食事、次は虫探し? なんか目的がどんどんズレてないか?」
フィアナが苦笑しながら答えた。
「カイン様の言うことも分かりますが……ローザさん、一応お年寄りなんですし、ゆっくり行きましょう」
「そうじゃそうじゃ! 老人を労れ!」とローザが調子に乗った。
カインは「なんかムカつく……」という顔でローザを睨んだが、結局そのまま全員で公園へ向かうことになった。
公園は土曜ということもあり、子どもたちが楽しげに遊んでいた。滑り台やブランコからはしゃぐ声が響く。
「ほぉ〜! あの奇妙な構造物はそうやって遊ぶのか! DVDにも一瞬映っておったが、何か分からんかった。これで疑問が一つ解消したわい」
ローザは感心しながら周囲を見渡し、続けて言った。
「して、虫とかはどんなのがいるんじゃ? カやアリは一緒みたいじゃの。蝶々もおるし、多少違えど似たようなもんじゃな」
カインが口を挟んだ。
「さすがにあっちの世界でお前が操ってたデカいアリは、ここにはいないぞ」
「あれはアリではない、蟻蜘蛛じゃ! こっちにはおらんのかえ?」
その言葉にカインとフィアナは顔を見合わせた。「蟻蜘蛛?」という表情だ。
一二三先輩が手を上げた。
「蟻蜘蛛ならいますよ。さすがにあんな巨大なのはいませんが。うちの駐車場でもたまにアリだと思ったら跳ねるやつがいて、一度調べたことがあります。あ、ヘビトンボも自然が多く綺麗な水が流れている場所なら生息してますよ」
虫に詳しい一二三先輩の説明に、カインとフィアナがひそひそと囁いた。
「虫博士だ……」
「間違いなく虫博士ですわ……」
「そこ! 聞こえてるからな!」一二三先輩が赤面してツッコミを入れる。




