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第72話 『詰めが甘い店長の秘策』


 「ちょっと脱線しちゃったけど、ヒナタさんを平和的に記憶を戻す方法ね……一応ここで働いてもらってて、自然に思い出すかな? って思ってたんだけど――無理だった」

 店長がバツの悪そうな顔をして肩をすくめる。

 「いやダメだろ、それ!」

 カインが即座にツッコミを入れる。

 「で、ここで秘策が登場ってわけだ」

 店長は胸を張り、わざとらしく声を張る。

 「ここにいる老婆! 名前はなんだっけ?」

 「ローザじゃ」

 杖をついた老婆が、しわだらけの顔を少し持ち上げて答える。

 「このローザ婆さんにコンビニで働いて、ヒナタさんと仲良くなってもらう!」

 「ちょっと待て」

 ローザは杖で床を軽く突く。

 「さっきから思っていたが、あそこはワシの住んでいた世界とは違う、よくわからん世界なんじゃぞ? しかも見たところ、ワシより大分若い者しかおらん場所で働けるのか? 魔王様と一緒に働けるという点においては有り難いことなんじゃが……そもそも魔王様を働かせるとは……ワシは泣けてくる……」

 老婆は肩を震わせて嘆き、鼻をすすった。

 「その点は大丈夫」

 店長が両手をひらひら振る。

 「あっちの世界の常識を覚えてもらうのは大変かもしれないけど、きっと大丈夫だと思うよ?」

 「部外者の私が言うのも変かもしれませんが……」

 藤咲フィアナが、おずおずと口を開く。

 「コンビニって、ずっと立ってたり、品出しでしゃがんだり立ったり……商品が入った箱も重いですし……お年寄りの方にはちょっと大変じゃないですか?」

 「大丈夫!」

 店長は急にキラキラした笑顔で指を突き上げる。

 「こんなこともあろうかと――見た目は百歳を余裕で超えてそうな婆さんでも、元気に普通に働ける方法を用意しておいた!」

 「……確かに百歳はとうの昔に超えとるが、人から言われると腹が立つもんじゃな」

 ローザは頬をひくつかせてぼやく。

 カインと一二三先輩は、同時に「普段の店長だな」とでも言いたげに頷いた。

 「さぁ見よ!」

 店長が胸ポケットから取り出したのは、宝石のはめ込まれた銀色のネックレス。

 「ご都合主義の極み! その名も――若返りのネックレス! これさえあれば、寿命は変わらないけど、着けている間だけなんと若返ることができる!」

 ローザは半眼でそれを見つめ、鼻を鳴らす。

 「……なんじゃそれは。怪しいのう」

 だが店長から受け取ると、掌でころころ転がして眺める。

 「そう言えば……そんな物がある、と昔聞いたことがあったかもしれんな……」

 老婆は小さく呟きながら、ゆっくりとネックレスを首に掛けた――。


ローザがネックレスの力で若返り、18歳ほどの姿になる。

感極まって涙を流すローザ。

店長は「最大1日だけ若返れる」と説明し、ドヤ顔。

だがカインに「何で一緒に働くと記憶が戻る?」と突っ込まれ、店長は「元の世界で面識がある人と一緒にいると戻る傾向がある」と説明。

「ワシは魔王様の事を知ってるが、側近や将軍じゃないから向こうは知らんと思うぞ?」と爆弾発言。

店長は驚くが、適当に「まあ多少でも面識があるかもだし、頼んだぞローザ君!」と丸投げ。

カインは呆れて「詰めが甘い」と冷静ツッコミ。

店長は「後は任せた」と異世界からコンビニへ逃走して行く。

その場に残ったカイン・一二三・藤咲・ローザ。

藤咲は「まずは観光かしら。服は私が用意しますわ」と明るく提案。

「くれぐれも余計な真似はするな。ヒナタさんと働くためだから言うことを聞けよ」とローザに忠告する。

一二三はというと、無口になったままローザを見つめ――

「師匠が可愛くなっている!最高だ!」と心の中で感動しきり。

ローザは「視線が怖いんじゃが?」と困惑している。



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