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第63話 『異世界バーベキュー』


川辺で、一二三先輩が石をカチカチと打ち鳴らしていた。

「むぅ……! 火よ、灯れ……! 我が前世の記憶を解放し、炎を……!」

しかし、火は一向に点かない。

店長が冷めた顔で近づき、

「一二三君、それ普通の石だからね? 火打石ですらないよ?」

そう言うと、着火剤を置き、ライターで一瞬。

――メラメラと立ち上がる炎。

一二三先輩は肩を落とし、深く項垂れた。

「……魔法が……使えない……」

カインは心の中で(ナイスだ店長! 見ていて辛すぎた…)と呟く。



カインと藤咲は野菜や農民が持ち寄った食材を切り続ける。

香ばしい匂いが漂い始めた頃――すでに店長は農民と杯を交わし、飲み食いの真っ最中。

「我を差し置いて、先に食べるとは!」

憤慨しつつも結局カインも合流。藤咲も一二三先輩も箸を手に取った。

やがて、笑い声が響く川辺。

最初にあったカインの藤咲への恐怖も和らぎ、

一二三先輩も魔法のことを忘れて肉に夢中。

――穏やかな宴が続くはずだった。



「……皆様、これは、ちょっとおかしいですわ」

藤咲が顔を引き締める。

いくらなんでも、皆の食欲が異常すぎる。

止めようとしても耳を貸さない仲間たち。

そのとき――網の上で焼かれている、明らかに毒々しい色のキノコに気づく。

藤咲は一瞬、前世の記憶を呼び覚まし、

「解毒の魔法!」

淡い光が広がり、一同の目が覚める。

「……何が起きてたんだ?」

「きっと、あのキノコが原因ですわ!」

農民は首をかしげる。

「いや、こんな派手な色のキノコなんて知らねぇぞ?」

店長は妙に詳しくうなずいた。

「これはね、名前は知らないけど異常に食欲を増進させるやつ。煙だけでも効くからタチが悪い。昔これで大変な目にあったんだよ」



「誰がこんな怪しいキノコを……」カインが呟いた、その時。

――ガサリ。

茂みをかき分け、一人の老婆が現れる。

その足元には、拳ほどの大きさの蟻が無数に這い出していた。

「ひ、ひぃぃ!」

農民たちは悲鳴を上げ、荷物も放り出して逃げ去る。

残されたのは、カイン、店長、藤咲の三人。

だが――食べ過ぎた腹のせいで動きが鈍い。

「測ったな、怪しき老婆め!」

カインが武器もないので、ジリジリとコンビニの扉へ後退する。

店長は歯ぎしりしながら叫ぶ。

「くそっ、聖なる唐揚げ串さえあれば!」

カイン(心の声):(呪われた串だろ、それは……!)

三人は扉へと必死に後退――。

だが、振り返ったカインが凍りついた。

そこに―― 一二三先輩の姿が、ない




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