第61話 『店長バーベキューの場所は?』
段ボール箱の山を片付けた先にぽっかりと空いたスペース。そこに折りたたみ椅子が並べられ、即席の会議室のようになっていた。
集まっているのは、カイン、一二三先輩、店長、そして藤咲フィアナ。
妙に緊張感と期待感の入り混じった空気が漂っている。
「……あの、ヒナタさんは?」
藤咲さんが首をかしげ、店長に問いかける。
店長は、にやりと含みのある笑みを浮かべて答えた。
「ヒナタさんは、まだちょっと早いかな?」
その瞬間、カインの脳裏に電撃のように嫌な予感が走る。
(……まさか。この待ち合わせが、ただの川辺でのバーベキューだと思っていたが……!)
「店長、川に行くって話でしたよね? ……まさか、異世界じゃあるまいな?」
半ば諦めたような声音で、カインは一応確認してみる。
すると店長は、待ってましたと言わんばかりに胸を張った。
「何を言ってるんだカイン君! このご時世、物価高に省エネの時代! 日本の川辺はバーベキュー禁止、火気厳禁! しかしだな、異世界の川なら話は別だ!」
まるでプレゼンのように手を広げ、力説する店長。
「運賃はゼロ円! 消費するエネルギーは魔力のみ! 現地住民だって『お、バーベキューやってる? 俺も混ぜてくれ!』と勝手に食材を持ち寄ってくるフレンドリー仕様! こんな好条件を見逃す理由があるか!」
カインは額を押さえて呻いた。
「……ではなぜ藤咲さんを呼んだんですか!」
その言葉に、藤咲さんの顔から血の気が引く。
「わ、私……やっぱり邪魔なんでしょうか……」
肩を落としてうつむく藤咲さん。
「あっ、いや、そうではない!」
慌てたカインが声を張り上げる。
「藤咲殿は悪くない! 悪いのは我だ! 前世の記憶が戻り過ぎるのが怖いだけで……! すべては我の不甲斐なさゆえ……!」
慰めているのか自爆しているのか、よくわからないフォローを炸裂させるカイン。
その横で店長は腕を組み、満足げにうなずいた。
「よし、じゃあカイン君が全部悪いってことで話をまとめよう!」
「待て待て待て!」
カインは椅子を蹴って立ち上がった。
「我は藤咲殿に対して“悪い”と言ったのであって、“全て”が我の責任ではない!」
「細かいことを気にしてると胃に穴があくぞ? さぁ気を取り直して異世界へGO!」
店長は満面の笑みで手を叩き、バックヤード奥の異世界ゲートをばん!と開いた。
カインは深いため息をつき、天井を見上げる。
「……結局こうなるのか……」
一二三先輩は先輩で、ゲートを見つめながらぶつぶつ。
「今度こそ……魔法……使えるはず……たぶん……」
そして藤咲さんはというと、さっきまでの落ち込みを忘れたかのように目を輝かせていた。
(店長と一二三先輩はお邪魔虫だけど……カインさんと一緒にバーベキュー……楽しみですわ!)
こうして、奇妙な4人組はコンビニの裏口から、きらめく異世界の川辺へと足を踏み入れるのだった。




