第57話 『草団子祭りの後に草餅祭りは嫌だ』
草団子祭りの喧騒もすっかり終わり、空気はどこかのどか。
「いや〜、団子作りは熱かったな……暑かったな……」
そうボヤくバイトたちの胃袋には、売れ残りという名の山盛り草団子がまだ残っていた。
そこへ店長がのほほんと現れる。
「そうそう、この前の農村がお礼にって小豆くれたんだよね〜。いっぱいあるしさ。次は“草餅祭り”とかどう? 季節感もいいし」
カインは目を剥いた。
「待て! 草団子祭りが終わったばかりであろう! また似たようなものをしてどうする!」
「じゃあ、この大量の小豆どうするのよ〜?」
「知らぬ! 赤飯でも炊けばよかろう!」
「……はい、今“赤飯”って言ったね? じゃあ次は“赤飯祭り”に決まりだね〜。甘いのばかりも飽きるし、ちょうど良かった」
「ちょ、待て待て! なぜ我が企画したことになっておる!」
店長はすかさず一二三先輩のもとへ駆け寄り、ニコニコ顔。
「ねえねえ、一二三君〜。カイン君が“赤飯祭りやりたい”んだって! 珍しく企画してくれるんだし、頑張ろうね!」
一二三先輩は眼鏡を押し上げ、深いため息。
「……あいつは何を考えてるんだ」
店長の姿を追って、慌てて走り寄るカイン。
「待て待て待て! 我は“草餅祭りは嫌だ”と申しただけだ! “赤飯でも炊いとけ”と言ったのも気まぐれである!」
「はいはい〜そういう意見もあるかもね。じゃ、とりあえずオーナーに“カイン君が赤飯祭りやりたい”って相談してくるから〜」
「全然解っておらぬだろうがぁぁぁ!」
叫ぶカインの目の前で、店長の姿はすでに煙のように消えていた。
残されたのはカインと一二三先輩だけ。
呆然と立ち尽くす二人。
やがて一二三先輩が肩をすくめ、ぽつり。
「……まあ、餅ついて焼くより、炊飯器で赤飯炊くだけなら楽かもしれないけどな」
カインは頭を抱えていた。
「なぜこうも我が策謀に巻き込まれるのだ……」
――かくして“赤飯祭り”の陰謀は、静かに進行していくのであった。




