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第52話 『魔力枯渇の真相』

 今回の素材採取は、拍子抜けするほどあっけなく終わった。

 例によって異世界に行く前は「何か一波乱あるのでは」と身構えていたが、モンスター的な何かが出てくるわけでもなく、現地で待っていたのはのどかな農村と、春の日差しに照らされた畑仕事だった。

 依頼されたのは草団子――いや、草餅だったか?――の原料になるヨモギの採取。それに加えて、近くの農家から「ついでに田んぼの畔の草刈りも頼む」と軽くお願いされ、何となく流れで手伝うことに。

 結果、作業が終わったときには、農家の人たちから「手伝ってくれたお礼」として団子用のあんこまで分けてもらえた。

 作業そのものは平和そのものだったが、カインの胸の奥には別の重さが残っていた。

 ――出発前に店長から言われたこと。

 「食材を提供しなければ、魔力不足による転生者の不調が発生する」

 その言葉がずっと頭を離れなかったのだ。

 一二三先輩はあまりピンと来ていないようで、「ふーん、そういうもんなのか」程度に受け止めている。だがカインは違った。異世界に関わる者として、魔力枯渇という言葉の持つ重みを知っている。放置すれば最悪命にも関わる――そう思っていた。

 異世界から帰還し、コンビニの休憩室に入ると、店長と藤咲さんが笑顔で迎えてくれた。

 「お疲れさまー」

 「お帰りなさいませ」

 カインは深刻な顔のまま椅子に腰を下ろす。その表情に気づいた店長が首をかしげた。

 「どうした? 何かあったか?」

 藤咲さんも心配そうにカインの顔を覗き込む。

 カインは少し迷った後、ぽつりと口を開く。

 「……いや、その……魔力枯渇の話が……重くてな」

 店長は「あ〜」と手を打ち、気まずそうに頭をかく。

 「いやあ〜、あれさ……やる気出るかなーって思って言ったんだけど、言わない方がよかったかもな」

 「本当に聞きたくなかったのだが……」カインは眉間に皺を寄せ、深くため息をついた。

 「ごめんごめん。でもさ、あの話にはちょっと誤解があるかもしれない」

 「誤解? ……魔力枯渇以外に、何があるんだ?」

 店長は指を立て、軽い調子で説明を始めた。

 「確かに魔力は枯渇するけど、それは転生後の話なんだ。もっと正確に言えば……“甘い物が食べたい”とか“揚げ物が食べたい”とか、そういう食欲の趣向が出てくる程度なんだよ。だから、そこまで深刻に考えなくていいってこと」

 カインはぽかんとした後、愕然と目を見開いた。

 「……待て。つまり、私は命に関わる重大な事態だと思っていたのに……実際は甘い物が食べたいとか、その程度のことだと……?」

 「そうそう、そんな感じ」

 藤咲さんも横で、くすっと笑いながら肩に手を置いた。

 「カインさん、そんなに深刻にならなくても大丈夫ですよ」

 どうやら藤咲さんは、異世界に行っている間に店長から詳しい説明を受けていたらしい。

 カインは項垂れ、低い声で呟いた。

 「……精神的にくる冗談はやめてほしい……」


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