54/124
第50話 『ぼやく』
カインが腕を組み、眉をひそめた。
「ちょっと待て。これじゃあ益々店長にこき使われるって事じゃないか?」
藤咲さんは落ち着いた表情で首を振る。
「困っている人達がいるのに、知らないふりは出来ませんものね」
一二三先輩が深くため息をつき、机に突っ伏した。
「……今身近で困ってるのは俺だって分かってるか? 俺だけ魔法使えないんだが。誰か助けてくれよ」
カインはそっけなく手をひらひらさせる。
「そんなもん知らん」
藤咲さんは小さく笑みを浮かべたが、すぐ真顔に戻る。
「……ともかく、今回は草餅……だったかしら、それとも草団子? その原料が足りないとかで」
カインが天井を仰ぎ、肩を落とす。
「また野良仕事か……。貴族である我が、こんなことを……」
ボヤきながらも、腰の剣をちらりと見やるカインの目には、諦めと覚悟が半分ずつ混じっていた。




