第47話 『コンビニに集まる3人』
コンビニの休憩室には、カインと一二三先輩の二人が缶コーヒーを片手にくつろいでいた。冷蔵庫のモーター音が静かに鳴る中、重たい沈黙を破ったのは一二三先輩だった。
「……なあ、カイン。昨日の夜、裏の世界に行った時のことなんだけどさ」
手にしていた缶をゆっくり机に置くと、彼は遠くを見るような目で言った。
「なんだか、あの農村風の景色……あの光景、モンスターたち……どこかで見たことがある気がするんだ。夢だったか、昔のゲームか、それとも――」
言葉を探すように口ごもったそのとき。
休憩室の扉が、控えめな音を立てて静かに開いた。
「失礼……します」
声の主は制服姿ではない。私服姿の女子高生――藤咲フィアナだった。
驚いた顔で振り向くカインたちに、彼女は小さく会釈する。
「ごめんなさい、みんなの邪魔をするつもりじゃなかったの。昨日、店長に呼ばれてて……それで来たの」
「藤咲さん……ああ、そういえば昨日、一緒に呼ばれてたな」
一二三先輩が記憶をたぐるように言い、カインも頷いた。
「確かに。店長、何か話があるって言ってたね。俺も聞いた」
フィアナはそっと部屋の隅に腰を下ろすと、少し躊躇したあと、ぽつりと呟いた。
「ねえ……昨日の夜、私、魔法を使ってなかった?」
一二三先輩とカインが驚いてフィアナを見つめる。
「……まさか、おまえ……」
カインが言葉を飲み込むと、彼女は小さく「うん」と頷いた。
「ライト」
そう呟くと、彼女の掌に淡い光が灯る。小さな光球がふわりと浮かび、天井を照らした。
「すごい……本当に……使えるんだ」
一二三先輩は立ち上がりそうな勢いで前のめりになり、目を輝かせる。
「いや、でもこれって、どういうことだ……。フィアナさん、何か思い出したり……?」
カインが少し緊張した面持ちで問いかける。
フィアナは困ったように首をかしげたあと、視線を伏せて呟いた。
「ううん、はっきりとは……でもね、向こうの世界に行くと、なぜかカインさんのこと……すごく憎くなるの。どうしてかは分からないけど、胸の奥がざわついて……」
言いながら彼女の表情が翳る。しかし、すぐに顔を上げ、笑って付け加えた。
「でも、今は違うから。むしろ……」
彼女はふっと顔を赤らめ、そしてカインには聞こえないような声で呟く。
「……むしろ、好きだし……」
「え? 今、なんて?」
カインが首を傾げる。
「な、なんでもないです!」
フィアナは顔を真っ赤にして慌てて言葉を打ち消す。
そんな二人のやりとりを、ちゃっかり全部聞いていた一二三先輩は、ニヤニヤしながら場の空気を変えるように言った。
「……それにしても、店長、遅いな。何かトラブってんのかな?」
わざとらしく話題を変えながら、彼は缶コーヒーを一口すすった。




