表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/124

第45話 『実食』

 コンビニの休憩室。夜勤組の面々がテーブルを囲んでいる。袋に入った謎肉の炙り料理がテーブルの中心に置かれている。

「さてと、出来たよ。謎肉の香草焼き。焦げ目もちょうどいい感じじゃない?」

 店長がトレーを置くと、香ばしい匂いがふわりと立ちのぼる。

 だが、その匂いに反応したのは――一二三先輩だけだった。

「これは……魔法に効く予感しかしない」

 眼鏡の奥で、彼の目が妖しく輝く。

「おや、我は……食べなくてもよいので?」

 カインが不思議そうに問いかけると、店長はあっさりと頷いた。

「うん。カイン君は食べなくても大丈夫」

「えっ!?」

 カインは珍しく驚いた顔をした。

「というか、今回はどっちかっていうと一二三君のための料理だしね」

 カインはその言葉に、ぐっと何かを堪えるような表情になった。

「む……。なるほど、なるほど。つまりこれは、貴様だけの特権と……。我には不要、と……。ふふ、なんとも高慢ではないか」

「いや誰もそんなこと言ってないんだが……」

 一二三先輩が呆れたように返すと、カインはわざとらしくそっぽを向いた。

「我も! 我も食す! いざ、対抗意識燃ゆる!」

「いやいやいや、お前、絶対いま“我が我儘言ってるだけ”のやつじゃん!」

 一二三先輩は皿を引き寄せながら目を細めた。

「断る。これは俺の、魔法のための食材だ」

「むむむ……! まるで我が我儘であるかのような言い草……!」

 拗ねたように頬を膨らませるカインの姿に、藤咲フィアナはただぽかんと事の成り行きを眺めていた。

 何も言わず、ただ空気の流れに身を任せているその姿は、もはやこの場に溶け込んでいるとも言える。

「いただきます」

 一二三先輩は宣言すると、あっという間に肉を平らげてしまった。目の前の料理が、まるで幻だったかのように消えている。

「うん、満足」

 皿を置きながら満ち足りたように笑う。

 店長は、少し含みを持たせた笑みで言った。

「ヨシ! 食べたね」

「……え? なんすか今の言い方」

「いやいや、悪い意味じゃないって。ただ、これで魔法が使えるようになるんだよね? って思ったんでしょ?」

「はい、なりますよね!? これで! 俺、ついに魔法が――!」

 店長とカインを見る。

 カインはゆるく首をかしげた。

「我には解らん」

 あっさりとした回答。

 店長は肩をすくめて言った。

「明日になってみないと、わかんないかなー」

 一二三先輩はため息をつきながらも、どこか満足げに椅子の背に体を預けた。

「……ま、これでダメでも、悔いはない」

「うん、それくらい美味しかったみたいで何よりだよ」

 店長がにっこりと笑う。

「じゃ、また明日の仕事終わりに、みんなで話でもしよっか」

「えっ?」

 ぽかんとしていたフィアナがようやく口を開く。

「私も……ですか?」

「できれば藤咲さんにも参加してほしいかなって思ってる」

 店長の言葉に、フィアナはちらりとカインの方を見る。

「……まあ、カインさんがいるなら、私も参加します」

 それは自然な言葉のようで、少しだけ嬉しそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ