表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/85

第3話 『いきなり断罪の危機』

 

 ――やばい。

 

 やばいやばい。

 

 よりによって、よりによってあのフィアナ様が転生してきてしまうなんて。

 しかもこの“まごころマート”に通ってくるなんて!

 

「唐揚げ棒、三本ください」

 

 彼女は今日もやってきた。

 やや伏し目がちで、礼儀正しく、でも笑顔はほんのり柔らかくて――前世と全く同じ。

 あの断罪会議で「あなたに悔い改めの心があるのなら、私は……」と優しく言っていた時と、まったく同じ笑顔!

 

(あの優しさの裏には、ギロチンの刃があった!)

 

 そして問題なのは、彼女が最近こう言い始めているということだ。

 

「店員さん、なんだか懐かしい香りがしますね。貴族っぽいっていうか……侯爵……?」

 

 言った! 今、絶対「侯爵」って言いかけた!

 俺の魂が震えた! 唐揚げ棒が落ちかけた!

 

「いえ、私はごく一般的な民でして……日々唐揚げ棒を揚げし民でして……」

「ふふ、変わってますね」

 

 やばい。これはやばい。

 

(このままいくと――)

 

 

▼《脳内妄想:断罪リターンズ!》▼

 

 店内に光が差し、BGMが壮大なパイプオルガンに変わる。

 

「カイン・エスカルド! あなたをこの世界でも断罪します!」

「民の中で真面目に生きていただけなのにィィ!!」

「あなたの罪は――接客中の偉そうな言動と、唐揚げ棒の提供角度が悪かったこと!」

「そこまで!?!?」

 

▼《現実》▼

 

「……あの、大丈夫ですか? さっきから目が泳いでますけど……」

「だっ、だいじょぶでござるっ!」

 

 取り乱しすぎて“侍口調”になってしまった。

 ひなたに後で「キャラブレてるってば」とツッコまれた。

 

 フィアナが帰ったあと、俺はバックヤードで店長に相談する。

 

「店長……人の記憶って、もし戻ったら、また断罪とかされる可能性って……ありますかね……」

「記憶が戻るかどうかは、本人の心の準備次第だねぇ。たとえば――」

 

 店長はホットコーヒーを片手に、やけに深い目で言った。

 

「“君が昔と変わらない態度を取ってたら、記憶が蘇る可能性は高い”」

「そんなバカな!? じゃあ俺はこのまま、民に媚びへつらって、へこへこしてるのが正解!?」

「まあ、民を舐めてた過去があるなら、民を愛する姿勢は大事だねぇ~。あと掃除ね。トイレ掃除」

「くっ……“掃除こそ民の心に触れる道”……」

 

 俺は、掃除用具入れに向かいながら誓った。

 

 もう、貴族っぽくなんかしない。偉そうなこと言わない。

 フィアナの前では常に笑顔、礼儀、謙虚。そして唐揚げ棒の角度は45度。完璧な接客!

 

 断罪されてたまるか!

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ