表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/124

第25話 『外は地獄、中は地雷』

 カインは休憩室を飛び出し、仮設テントの下――焼き場へ戻ってきた。

 コンロの前では、一二三先輩が無言でフランクフルトを転がしていた。

 巨大な業務用扇風機が回ってはいるが、炎天下の熱気は微塵も和らがない。

「す、すみません先輩……代わります!」

 カインが慌てて声をかけると、一二三先輩がこちらを振り返る。

 その顔に、暑さで消耗している様子はなかった。

 代わりにあったのは――強烈な嫉妬と、冷たい怒気。

「……へえ、カインくんは店の中で膝枕で休憩するのが仕事なんだ?」

「な、なんで知ってるんですか!?」

「まあ……目撃情報ってやつ?」

 一二三先輩は、トングをカインに押しつけるように手渡すと、睨むように言った。

「……そういうの、バイトリーダーにも報告すべきかなって思っただけ。じゃ、涼んでくるわ」

 背中を向けて店内へ向かおうとするが――

「あ、ちょっと」

 不意に別の足音が割って入った。

 日陰の隅から現れたのは――店長だった。

 腕まくりし、頭にタオルを巻いた店長は、焼き場の横にひょいと入り込む。

「なーんだ、ちょうど交代か。じゃ、俺も一本、焼こうかな」

「て、店長!? 戻らないんですか?」

「ははは、こんな楽しいことやってるのに戻るわけないだろ。青春してるなー、君たち」

 そう言って、店長はやたら楽しそうにフランクフルトをトングでつまみ、じゅうじゅうと転がし始めた。

「……何が楽しいんですか……」

 カインは思わず小声で呟く。

 だが店長は聞こえていないふりをして、さらに笑顔を深くする。

「今年はなーんといっても、“あれ”があるからな。“唐揚げ串”の代わりに、“フランクフルト”。しかも一本30円! あー楽しい夏が始まったなぁ!」

 意味深に笑う店長の姿に、カインはどこか寒気を覚える。

 その一方、店の中では――

 藤咲さんが、記憶を辿るような不安定な視線を浮かべて、ひなたの問いかけに小さく首を振っていた。

 外は灼熱の地獄。

 中には“地雷”が眠る危うい空間。

(どっちも地獄じゃないか……)

 カインは、焦げそうなフランクフルトを無言で転がしながら、乾いた笑いを漏らした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ