表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/124

第21話 『登校中の2人』

 朝の通学路。

 夏の名残が漂う中、制服の袖がまだ暑さを含んでいる。

 藤咲フィアナは、どこかぼんやりとした表情で歩いていた。

 その横を並ぶひなたは、じっと彼女の横顔を見ながら、ぽつりと口を開いた。

「ねぇ、フィアナ。本当に大丈夫なの? 昨日のバイト先で倒れたって聞いて、正直ちょっとビビったんだけど」

「うん……大丈夫。気がついたら、休憩室の椅子で寝てて……カインくんが、助けてくれたみたい」

「ふーん……って、あれ? そもそもさ――」

 ひなたは歩みを止め、やや真顔になる。

「客の立場である藤咲さんが、なんで裏口から勝手に入ったの? 普通に考えてダメでしょそれ」

「……それが、ちょっと自分でもよくわからないのよね」

 フィアナは申し訳なさそうに笑うと、少し前を見つめた。

「裏手の壁のところで、なんか……扉みたいなものが見えた気がして。気づいたら、勝手に……っていうか、吸い寄せられるように扉に手をかけてて」

「え、マジで?」

「うん。でも、実際に何があったかはあんまり覚えてないの。扉に入った後、すぐ立ちくらみがして、そこから記憶がふわっとしてる感じ」

「……フィアナって、たまに天然入るけど、突き抜けるとそこまで行くんだ」

「そんな風に言わなくても……」

 フィアナがぷくっと頬を膨らませる。

 ひなたはふっと笑って、その表情を和らげた。

「でもまあ、倒れる前に誰かに助けられててよかったよ。ほんと、変な事件に巻き込まれたかと思った」

「うん、ありがと。カインくん……すごく焦ってたらしいし……たぶん迷惑かけたよね」

「まあ、本人もけっこう挙動不審だったし、そこはおあいこってことで!」

 ふたりは再び歩き出す。

 通学路は、いつものように平穏だった。

 でも、フィアナの中には、どこか現実とは違う場所の気配が、まだ微かに残っていた――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ