第19話 『戦いの後に』
唐揚げ串と呪われた竹刀によるネズミの魔物の大群は、あっという間に殲滅された。
藤咲フィアナの放った聖なる浄化の光により、死骸もきれいさっぱりチリと化して消えていく。
――静寂が戻った村。
「はぁ……終わった……」
カインは竹刀を肩に乗せて深いため息をついた。
が、そのとき。
「……断罪……」
「……悪徳貴族は……成敗しなければ……」
後ろから聞こえる、妙に聞き覚えのある声音。
振り返ると、そこには無表情で――しかし確かな殺意(っぽい何か)をこめて歩み寄ってくる制服姿の少女。
「ちょっ……おい、藤咲さん!? 何ブツブツ言ってんの!?」
カインは無意識に一歩、二歩と後ずさる。
藤咲フィアナは記憶が微妙に戻りかけていた。そして思い出したことがひとつ。
(わたくしは……あの男を……断罪した気が……する……!)
「カインさん、あなた……まさか、あの悪徳貴族……?」
「いや、うん、たぶんそうなんだけど今じゃただのフリーターだから許して!!」
迫りくる聖女(※自称)から逃れるように、カインはあの“異世界ゲート”へと駆け寄った。
「開いててよかった!!」
バッと扉を開けたその先――現実世界のコンビニバックヤードが見える。
ヒゲメガネのカインが、急いで足を踏み入れようとした、その瞬間――
「やっほ~。終わった~?」
のんきな声とともに、扉の向こうから店長がひょっこり顔を出した。
「って、あれ? 聖女様じゃん? なんでこんなとこにいるの?」
「え、なんで店長がここにいんの!?」
カインは困惑しつつも、背後の気配がどんどんヤバくなってきていることに気づく。
「断罪……断罪……」
「おっと! オレ帰る!!」
とっさに店長の頭をつかんで「邪魔!」とばかりに押し戻し、
自分もそのまま扉の向こうへと跳び込む。
――直後。
「待ちなさぁああああああいッッ!!」
フィアナが叫びながらその後を追い、制服のまま光の扉に飛び込んでいった。
しん……と静まり返る村。
すっかりネズミの魔物の気配も消えた広場に、村人たちがぞろぞろと集まってくる。
「……あれが……ヒゲメガネ様……」
「さすが、伝説の救世主じゃ……!」
「聖女様まで降臨なさるとは……ありがたや……!」
村人たちは、今しがた扉の向こうに消えていった二人――そして何故か押し戻された店長の姿まで思い浮かべながら、感謝の言葉を口々に唱えていた。