第15話 『結果報告とその後』
登校途中。制服姿のひなたは、学校の裏門近くで手を振るフィアナと合流した。
「おはよう、フィアナ。今日も元気そうだね」
「おはようございますわ、ひなたさん! あのっ……昨日の件、どうでしたの!? ちゃんと渡していただけましたか!?」
朝日よりもまぶしい勢いで詰め寄ってくるフィアナに、ひなたは苦笑しながらうなずいた。
「うん。クッキーとハーブティー、ちゃんと渡してきたよ」
「や、やりましたわぁああ……っ! 第一関門突破ですのね!」
フィアナは両手を胸元で組み、感動に震えていた。
「でね、カインさんなんだけど……めっちゃ挙動不審だった」
「えっ!? ど、どういう……」
「顔がこわばってて、手もガタガタ。なんか壁にもたれてボソボソ何か言ってたし」
「……ま、まさか……!? それって……わたくしのこと、意識して……?」
フィアナの瞳がキラッと光る。
ひなたは苦笑いしつつも、正直に言った。
「たぶん、動揺してたのは間違いないよ? もうね、あれ完全に“効いてた”感じ」
「うふふふふふ……ついに……心を揺らしましたのね……!」
フィアナは両頬をおさえ、空を見上げて幸福の波にのまれていく。
「この気持ち、やっぱり……恋、ですわよね……!」
「(カインさんがあんなに混乱してたのに、なんでこんなにポジティブなの……)」
その夜:コンビニにて
ひなたとカインは、夜のコンビニで在庫チェックをしていた。
「カインさん、昨日……いや、今日の朝もなんか様子変でしたよね」
「……そうか?」
「うん。ぼーっとしてたし、手震えてたし、あとクッキーじっと見つめてましたよ」
「……そ、そうだったか……いや、ただ……アレがすごいインパクトで……」
カインは目をそらしながらごまかす。
だが、心の中はざわついていた。
(何がどうしてこうなった……記憶が曖昧なまま、なぜか俺に妙な好意を向けてくる人が……)
そこへ、店長が品出しカゴを持って背後から登場する。
「やっほ~、青春してる? 二人とも距離が近いねぇ」
「店長、また聞いてたんですか」
「うん、だって客いないし。ヒマだし。面白いし」
「趣味で恋愛観察しないでください」
「いやだってさ~、この状況、正直カインくんの戸惑いが最高のスパイスじゃん? もっと混ぜたい」
「やめて混ぜるな。心の消化に悪い」
ひなたはくすっと笑った。
「でも店長、ちょっと楽しんでますよね」
「うん、もちろん」
その返事の速さに、カインは深いため息をついた。