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第117話 『ローザは何処に?用水路も何処に?』


「あ……れ?」

カインは、辺りを見回しながら眉をひそめた。

さっきまで隣にいたはずのローザの姿がどこにも見えない。

「一二三、ローザはどこに行った?」

「ん? ああ、なんか“疲れたから帰る”って言ってましたよ」

 一二三先輩は、麦わら帽子をかぶりながら、あっさりと言った。

「異世界っていっても、空気乾いてて日差し強いし……まぁ、帰りたくもなりますよね」

「……おいおい、それを簡単に流すな」

 カインは額を押さえた。

「ってことは、我らだけで“用水路補修”をやれと?」

 一二三先輩は、辺りを見渡す。

 そこにあるのは――ただの荒れ地。

 草はまばらに生えているが、用水路らしきものはどこにも見当たらない。

「これ……どこが“用水路”なんすかね? カイン、あれか?」

 一二三先輩が遠くの枯れ草の溝を指さすが、どう見てもただの地割れだ。

「……我には、単なる荒地にしか見えん」

「ってことは、“補修に来たけどなかった”ってことで帰っていい流れでは?」

 カインがそう言いかけたその時――

「おーい、兄ちゃんたち!」

 低く通る声が背後から響いた。

 振り向くと、日焼けした農家のオッサンが鍬を担いで立っている。

 腰には革のポーチ、顔は日に焼けて黒光りしている。

「助っ人なんだろ? 帰るは流石にないだろう?」

「す、助っ人?」

「店長が言ってた通りだな……」とカインが小声で呟く。

 農家のオッサンは、顎で地面を示しながら続ける。

「この時期にやらなきゃ、春まで間に合わんのさ。

 草が少なくて雪もねぇ今のうちにやっとかないと、水が通らん。

 さっさと手伝ってくれよ、兄ちゃん達。期待してるからな!」

「き、期待!?」

 一二三先輩は苦笑いを浮かべた。

 カインは渋い顔で地面を見下ろす。

「……で、その“用水路”とやらはどこにある?」

「足元だよ」

 オッサンは笑いながら答える。

「まぁ、今はそう見えねぇだろうな。夏の終わりにはな、獣やら魔物やらが掘り返して、このザマさ。

 でも、これを直してこそ次の作物が育つってもんさ」

 彼は、どこか遠くを見るような目をして言葉を続けた。

「昔からそうやって受け継いできたんだ。

 水の流れを守るのは、人の暮らしを守ることなんだよ」

 その静かな言葉に、カインと一二三先輩は一瞬黙り込む。

「……なるほどな。責任感は立派だが――」

 カインが苦笑しながら鍬を受け取る。

「我ら、鍬の扱いは素人だぞ?」

「大丈夫だ、見よう見まねでできるさ!」

 一二三先輩が爽やかに笑い、袖をまくる。

「……おぬし、こういう時だけ妙に前向きだな」

 カインがため息をつきながらも、結局地面を掘り始めた。

 その頃、彼らのいないコンビニでは――

「ふぅ……やっぱり異世界の空気は乾燥しておるのぅ」

 ローザが冷たいアイスコーヒーを片手に、休憩スペースでくつろいでいた。



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