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第115話 『小学校の運動会を観戦』


 青空の下、白いラインで区切られた運動場に、子どもたちの歓声と笛の音が響く。

 手を振る保護者達やカメラやスマフォを構える保護者達、そして時折聞こえるマイクのハウリング。

 その中に、ひときわ場違いな二人――。

 コンビニの制服のまま、日傘を差している若い女性(中身は100歳越え)と、やや面倒くさそうな青年。

 そう、ローザとカインである。

「おおおっ!? なんじゃ今の音は!」

 ローザが耳を押さえ、びくっと肩を震わせた。

 パンッ!と乾いた破裂音――スタートのピストル音が鳴り響く。

「スタートの合図だ。ただの音だ、戦闘開始じゃない」

「な、なんじゃと……!? 今の音で皆、一斉に走り出したではないか!」

 ローザは目を輝かせ、双眼鏡を構えた。

 走る子どもたちの姿を食い入るように見つめる。

「見よカイン! あの小さき者どもの俊敏な脚捌き! あれはまるで森の妖精の舞いではないか!」

「……ただの徒競走だ。魔法も何も使ってないからな」

「ふむ、だが見事じゃ。体格も魔力も無き者が、己の肉体だけで競うとは……尊い!」

 ローザのテンションは上がる一方。

 子どもたちが転んで立ち上がるたびに、「立て!まだいけるぞ!」と拳を握って応援している。

「おいローザ、声がでかい。完全に浮いてるぞ」

「よいではないか! 見よ、あの母親たちも負けじと声を上げておる!」

 確かに、周囲の保護者たちも熱気に包まれていた。

 いつの間にかローザもその中に溶け込み、隣の奥様方と一緒に拍手している。

「がんばれ〜! 青組がんばれ〜っ!」

「……おい、いつの間に組分けに参加したんだ」

「赤の旗を持っておった子が可愛かったから、青の方を応援することにした!」

「理屈がめちゃくちゃだ……」

 だが、そんなカインの言葉もむなしく、ローザのテンションは最高潮。

 次の競技――玉入れが始まると、彼女はさらに乗り出していく。

「おお! これは兵站戦か!? 小さき兵たちが弾丸を敵陣に投げ入れておる!」

「……いや、玉入れだ」

「ふむ、わからぬが熱き戦であることは理解した!」

 ローザの瞳は、完全に戦場を見ているそれだった。

 横でカインは、冷たいお茶を啜りながら静かにため息をつく。

「……やれやれ。異世界に来ても、どこでも戦場が見える奴だな」

 そのとき、アナウンスが響く。

『次の競技、“保護者リレー”にご参加の方は、整列をお願いいたします!』

 ざわめく観客席。

 ローザが興味津々でカインを見た。

「カイン、お主も保護者のふりをして出てこい!」

「出るわけないだろ! 誰の保護者だよ!」

「ワシのじゃ!」

「お前のかよ!」



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