第111話 『カインが断罪された真相が気になりだす。』
昼下がりのコンビニ。
カインと一二三先輩は、ゆるやかな午後のレジを担当していた。
「なあ、カイン」
暇を持て余した一二三先輩が、レジカウンターに肘をつきながら話しかける。
「お前さ、転生前に“藤咲さんたちに断罪された”とか言ってたよな?」
唐突な質問に、カインの手がピタリと止まる。
検品中のスキャナーの赤い線が、レジ前のペットボトルを行ったり来たりしたまま止まらない。
「……な、何の話だ?」
「いや、だって気になるじゃん。今こうして見る限り、お前ってそこまで悪い奴に見えないし。
それなのに“断罪”なんて物騒なことされたって、何やらかしたんだよ?」
「……さぁな。昔のことなど、もう忘れたわ」
カインは視線をそらしながら、急に後ろの棚を整えだす。
「まあ……何かやったのであろう」
「おいおい」一二三先輩が苦笑する。
「そんなあからさまに動揺してる奴があるかよ。覚えてるんだろ?本当は」
「知らん知らん! というか、覚えておっても我は教えんぞ!」
カインは耳まで真っ赤にして言い返した。
「ははっ、そこまで言うなら無理に聞かねぇよ。
でもさ、言いたくなったらいつでも言えよ?」
「気持ち悪いわ!」
「ひどっ!」
そんなくだらないやり取りに、レジ前の空気が少しだけ和む。
別の日、夕方。
日が傾き、外はオレンジ色に染まっていた。
コンビニのドアベルが鳴り、藤咲フィアナがゆっくりと入店する。
「いらっしゃいませ〜」と一二三先輩。
カインはレジ横で唐揚げ串のトレーを入れ替えながら、ちらりと藤咲を見た。
「藤咲さん、ちょっと聞いてもいい?」
一二三先輩が声を潜める。
「カインってさ……断罪されたって言ってたけど、何したの? 本人、絶対教えてくれないんだよ」
藤咲は少し驚いたように目を瞬かせ、それから微笑んだ。
「そうですわね〜……」
彼女は言葉を選ぶように、視線を少し下に落とした。
「でも、カイン様が“言いたくない”というのであれば、私の口から申し上げるわけにはいきませんわ」
「え、やっぱり何かあったんだな……?」
興味津々の一二三先輩。
その瞬間、奥から怒鳴り声が響いた。
「おい! 余計なことを聞くのではない!」
カインが勢いよくトレーを置き、レジ前に出てくる。
「藤咲さんも、何も言わんでよい! 買うもの買ったらさっさと帰れ!」
「ふふっ……」
藤咲は苦笑しながら、袋にお菓子とジュースを二つ入れて受け取る。
「そういう事ですので、私は帰りますわ。
――人の秘密なんて、聞くものではありませんよ」
そう言い残して、藤咲は軽やかに店を出ていった。
ドアベルが鳴り、外の風が少しだけ吹き込む。
「……ますます気になるな」
一二三先輩がボソッと呟く。
その横でカインは、顔をそむけながら言った。
「気にするな。どうせ、我の過去など……ロクなもんじゃない」
しかし――その横顔は、どこか寂しげでもあった。




