第104話 『コンビニへの帰還』
コンビニ・バックヤード
ふと、バックヤードの壁際に置かれた段ボールがガタリと揺れた。
次の瞬間、光の渦が現れ、その中から三人の人影が転げ出てきた。
異世界への扉は、消えていた。
「……うおおお、やっと戻ってこれたか!」
「背中が……背中が藁くさい……」
「はぁ……疲れましたわぁ……」
カイン、一二三先輩、そして藤咲フィアナ。
異世界の洋館探索を終えた彼らは、埃と泥と汗にまみれた姿で、コンビニのバックヤードに無事帰還した。
「……まずは」
「……まずは?」
「「「シャワーだッ!!!」」」
三人は顔を見合わせるや否や、迷わずバックヤード奥にあるシャワー室へと向かう。
このコンビニには、なぜか店長の“気まぐれ設備”としてシャワー室が完備されていたのだ。
カインは冒険用の軽装(鎧なし)だったが、落とし穴や罠のせいでシャツもズボンもボロボロ。
それでも、ちゃんと替えの服――ジャージを持ってきていた。
一二三先輩も、罠の洗礼を何度も受けたため、服はシミだらけでヨレヨレ。
「……だから着替えは必須なんだよな」と言いながら、Tシャツとスウェットを取り出す。
一方の藤咲フィアナは、店長に「異世界行くなら替えの制服も持ってけ」と念を押されていた。
「まさか本当に必要になるとは……店長さん、意外と気が利きますのね」と、花柄タオルと新品の制服を準備していた。
「さて、順番だが……」
「もちろん私が一番ですわよ。レディーファーストですわ!」
「ちょっと待て、そんな理屈は認めん!」
「俺も嫌だぞ! この汗と泥を放置とか地獄!」
三人は睨み合う。次の瞬間、ジャンケン勝負が勃発。
「最初はグー!」
「……勝った!」
「ぐあっ、負けた!?」
結果――藤咲フィアナが圧勝した。
「ふふん♪ 当然の結果ですわね」
誇らしげにシャワー室へ消えていくフィアナ。
残されたカインと一二三先輩は、泥だらけのまま呆然と立ち尽くした。
「……なあ、カイン君」
「……なんだ」
「今からでも一緒に入って追い出さないか?」
「……勇気は認めるが、命は保証できんぞ」
二人は深いため息をつき、壁にもたれて順番を待った。




