第101話 『もう帰りたい』
階段を上がり、しばらく薄暗い廊下を進むと――突き当たりに、異様な気配を放つ扉が現れた。
「……ここだな。間違いない」
カインが低く唸り、拳を握る。
「さっさと退治して帰るぞ。もう粉まみれと罠はごめんだ」
「ちょ、ちょっと待て。扉……またビリッとしないよな?」一二三先輩が腰を引き気味に言う。
「多少痺れようがどうでもいい! 我は帰りたいんだ! シャワーを浴びて清潔な服を着たい!」
カインは苛立ちを爆発させながら、乱暴に扉の取っ手を掴んだ。
その瞬間――
ガコンッ!
「えっ?」藤咲が声を上げた次の瞬間、床が崩れる。
「うわあああああああ!」
三人は叫び声をあげながら、下の階へ真っ逆さまに落下していった。
ドサァッ!!
幸い、落ちた先は山盛りの藁。衝撃は吸収され、怪我はない。
だが――カインの精神的ダメージは計り知れなかった。
「……もう嫌だ! 我は帰るぞ!」
藁まみれのカインが、完全に心を折られた顔で叫ぶ。
「ちょ、ちょっと待ってください! あの部屋に入って退治すれば終わりなんです! もう一踏ん張りしましょう!」
藤咲が必死に説得する。
「そうだよ、カイン君! もうちょっと! ほら、頑張ろう!」
一二三先輩も満面の笑みで親指を立ててみせた。
「……なぜだ、一二三先輩に励まされると余計に腹が立つ……!」
カインは頭を抱えた。
彼は藁を払いのけながら、深いため息をつく。
「……仕方ない。もう一度だ。さっきとは違う階段しかないか」
「別の階段……? また落とし穴とかあったらどうするんだ?」一二三先輩が不安げに言う。
「嫌な予感しかしない……」
カインの声はどんよりと暗い。
「不吉な! でもまあ、いざとなれば俺の魔法でどうにかなるでしょう?」
一二三先輩がケロッとした顔で言う。
「……そ、そうだな」カインが低く唸る。
その時、藤咲がさらりと口を開いた。
「水を被るような罠があった場合、服を乾かすのに風魔法をお願いしますね」
「……ナチュラルに酷いな。突っ込むに突っ込めん……」
カインは小声で絶句し、肩を落とした。
こうして三人は、再び階段を探しに歩き出すのだった。




