第100話 『怪しい洋館風の建物前』
怪しい洋館の前
異世界の月明かりの下、怪しげな洋館風の建物が静かにそびえ立っていた。窓は黒く閉ざされ、時折カタカタと音を立てる窓や扉。見るからに「いわくつきです」と主張している。
カインは腕を組み、深いため息をついた。
「藤咲さん、本当にこの中を調査するのか?」
藤咲フィアナは神妙な面持ちで頷く。
「もちろんです! 外からでもものすごい怪しい気配を感じます。きっと怨霊が住み着いています。浄化しなければなりません!」
カインは眉をひそめ、屋敷の壁を見上げる。
「それは……外からできないのか? わざわざ入る危険を冒さずとも、建物ごとドカンと浄化すればいいだけでは?」
「なるほど! 確かに中に入らずとも外から浄化すればいいだけかもしれません。やってみます」
藤咲さんは胸の前で両手を合わせ、浄化の祈りを始めた。
そんな中、一二三先輩がこそこそとカインに耳打ちする。
「なあなあカイン君、個人的には入ってみたいんだけど……やっぱ危険なのか?」
カインはため息をつきながらも冷静に答える。
「それはもちろん、藤咲さんほどの聖属性なら問題はないだろうが……自分でも対策していなければ、怨霊相手に遅れを取る可能性がある。一二三先輩みたいに魔力がほとんど無い人間だと、まあ餌でしかないな」
「そ、そうなのか……不用意に入らなくて良かった。藤咲さんの浄化が終わるまで待つか……」
一二三先輩は青ざめた顔で屋敷を見つめた。
カインがふと気づき、指をさす。
「おっ、そろそろ浄化魔法が発動しそうだ」
「――浄化の光よ!」
藤咲さんが叫ぶと同時に、屋敷全体が神々しい光に包まれた。
……が、何も起こらない。
「えっ、失敗?」藤咲さんが首を傾げる。
「ん? 浄化されていない……」カインもすぐに異変に気づいた。
一二三先輩が不安げに聞く。
「そんなことあるの? こういう場合はどうするんだ?」
カインは腕を組み直し、屋敷を睨む。
「結構立派な屋敷だからな。もれなく魔法対策がされている。外部からの魔法は遮断される……まあ良くあることだ。面倒だが、中に入ってから浄化を試みるしかあるまい」
藤咲さんは一呼吸置くと、鞄からいくつかのアイテムを取り出した。
「入るしかないですね。店長さんから装備品を預かっていますので、二人に渡します」
カインには――ヒゲメガネと唐揚げの串セット。
一二三先輩には――前回来たとき出番のなかった菜箸。
「……ヒゲメガネ? これに何の意味が? 今回は民はいないから顔を隠す必要もないんだが……まあいい」カインは渋々受け取る。
一二三先輩は菜箸を掲げ、やたらやる気だ。
「前回使わなかったこの菜箸! 今回は絶対活躍させてもらうぞ!」
「まあ二人とも頼もしいわ! では、行きましょう」
藤咲さんが扉の前に立ち、ギイ……と重いドアが開かれた。
――怪しい洋館の中へ。




