第99話 『怪しい洋館風の建物が見つかる』
とある夜勤の日
カインと一二三先輩が、いつものように深夜のレジ番をしていた。
コンビニの店内は静まり返り、時折やって来る客の足音と、レジの「ピッ」という音だけが響いている。
そこに――バタン!と勢いよく自動ドアが開き、店長が息を切らしながら飛び込んできた。
「カイン君、大変だ! 異世界の方でとてつもなく怪しい洋館風の建物が見つかった!」
店長の目はギラギラと輝き、完全に“面白がっている”それだった。
カインは両腕を組み、カウンターにふんぞり返って言い放つ。
「嫌ですよ。どう見ても怪しさ満点じゃないですか。絶対面倒ごとになる顔してますよ、店長」
「まあそう言うと思ったよ……」
店長はわざとらしくポケットからハンカチを取り出し、目元を拭きながらうそ泣きを始める。
「せっかくワクワクドキドキを探してきたのに、拒否するなんて……」
「泣き落としなぞ、我には通じぬ!」
カインはピシャリと拒否。
だがその瞬間、店長が後ろに手を振った。
「藤咲さん! 異世界が大変だというのに、カイン君が恐れをなして動こうとしないんだ! 助けてくれないか!」
どこからともなく現れた藤咲フィアナが、ぱっと目を見開いた。
「まあ! カイン様、異世界で困っている人達がいるんですよ? 助けに行きましょう! 過去に起こした罪滅ぼしにもなりますよ!」
「いやっ、ちょっと待――」
藤咲さんはカインの手を容赦なく掴み、そのまま異世界の扉の方へとずるずる引っ張っていく。
店長は満足そうに腕を組み、にやりと笑った。
「ほら! 英雄というものは庶民を助けてナンボ! 一二三君も手伝って! ここは任せて先に行け!――言ってみたかったんだなあ、この言葉」
「いや、特に英雄になりたいと思ってないんだけどな?」と一二三先輩はぼやきながらも、カインの背中を押し始めた。
「まあでも、たまには師匠がいる異世界に行くのもいいかもしれない。今日の夜勤は暇だったし……魔法の練習がてら行ってみるかな! よしカイン君、行くぞ!」
「やめろぉぉぉ! 我はまだ心の準備が――」
カインの叫びもむなしく、異世界への扉が光り輝き、三人まとめて吸い込まれていった。
――残された店長だけが、なぜかやけに満足げな顔をしていた。




