第98話 『カインの失言』
コンビニ前での焼き芋屋台も終わり、すっかり夜風が涼しいある日のこと。
カインは、ふと横に立つ店長に言った。
「我等は、ここで魔力が含まれた食べ物を下々の者達に配布する……それは解っている。だがそれ以外に何か目的があるのか? 最近、文化祭的なイベントしかやっていない気がする。コンビニなのに」
店長は屋台ののぼり旗を畳みながら、のんびりとした声で答えた。
「う〜ん、敢えて言おう! 何も無いと!」
「即答か!?」
「しいて言うなら、ヒナタさんの記憶を穏便に復活させることくらいかな?」
「かな? じゃないよ!」カインはツッコミ気味に身を乗り出した。「こう……最近流行りの異世界転生物みたいな! 世界の平和を守る的な! ワクワクドキドキ的なのを我は求めている!」
店長は腕を組み、うーんと首をかしげる。
「やっぱりそんなのはないかな? カイン君ってなかなか子供っぽい所があるね」
「我を愚弄するな! 子供ではない!」
「守ると言えば、コンビニ周辺のゴミ拾いくらいかな?」
「先程も言ったが、刺激がほしい! 余りにも平和過ぎる! 我もこの世界で記憶が戻り、我等の特異性は解っている。こちらの世界でも魔法が使えるし……何かこう! 不完全燃焼的な感じが、どうも性に合わん!」
カインの熱弁に店長は顎に手を当て、やがて口角を上げた。
「そっか〜。まあ、何か考えておくよ。ぐうの音も出ないようなワクワクドキドキを!」
その不適な笑みに、カインは慌てて手を振った。
「ちょっとまて! やっぱり平和が一番だ! 何も事件もなく平穏な日々を送る……なんて素敵ではないか!」
「ふーん? 急に路線変更したねえ」
カインは店長が碌でもないことを考え出したように見えて仕方なかった。
「ちょっと、野暮用が出来たので後よろしくね。もうすぐ次のシフトの人も来るだろうし」
店長はそう言い残し、ひらひらと手を振りながらコンビニの奥へ消えていった。
――不安しか残さない笑みを残して。




