第1章 青雲の風
青雲宗は中原の深い山谷に位置し、群峰に囲まれ、清らかな水と美しい山々が広がり、まるで人間界の仙境のようである。朝霧が立ち込める中、弟子たちは剣を手に修行し、剣光は星のように煌めき、掛け声が谷間に響き渡っていた。宗門内には滝が勢いよく流れ落ち、竹林は青々と茂り、石の小径は曲がりくねって続いている。門下には約200人の弟子がいて、宗師と掌門は合わせて10人、いずれも武林で名を馳せる人物ばかりであった。青雲宗は「青雲剣法」で江湖に名を轟かせ、その剣技は鋭く、雲のように優雅であった。しかし、江湖の風雲が変わるにつれ、青雲宗は次第に衰退し、かつての威名は高山の頂に封じ込められたかのようで、弟子たちの心には不安がよぎっていた。
掌門の雲鶴真人は大殿に座り、眉をひそめ、蝋燭の光が彼のこめかみの銀髪を照らし、手にした数珠を指で弄びながら沈思黙考していた。段長老は深いため息をつき、「掌門よ、強大な武学の支えがなければ、青雲宗はかつての栄光を取り戻すことは難しいでしょう。噂によれば、チンギス・ハンの遺宝がモンゴルの大砂漠に隠されており、その中には失われた『龍象訣』があるとか。これは絶世の武学です。もしそれを得ることができれば、青雲宗は必ず再び雄風を取り戻せるでしょう」と言った。
雲鶴真人は深い眼差しでゆっくりと語った。「この旅は非常に危険だ。若く、胆力と知恵を兼ね備えた弟子が必要だ。」
その場は一時沈黙に包まれた。段長老は周囲を見回し、「蕭逸風は天賦の才に恵まれ、剣技はすでに『雲影』の境地に達しています。彼を向かわせてはいかがでしょう?」と提案した。
蕭逸風はまだ二十歳でありながら、剣技は抜きん出ており、鋭い洞察力を持ち、すでに宗門内でも傑出した存在であった。知らせを受けた彼は片膝をつき、揺るぎない声で言った。「弟子は参ります。どんな困難や危険が待ち受けていようとも、必ず宝を宗門に持ち帰ります!」
夜幕が降り、澄んだ月光が青雲宗の石段に降り注いでいた。蕭逸風は石段の前に立ち、馴染み深い庭や灯火を見つめ、心には未練と決意が入り混じっていた。佩剣を優しく撫で、師兄弟たちと切磋琢磨した日々を思い出し、心の中で誓った。「どんな道であろうとも、必ず宗門の期待に応えてみせる。」
夜が明け、東の空が薄明るくなり、朝霧が漂い、山林には鳥のさえずりが響いていた。蕭逸風は荷を背負い、腰に長剣を佩き、宗門を後にした。山風が衣を揺らし、彼は深く息を吸い込み、一歩ずつ山道を下り、その姿は蜿蜒たる山道の先へと消えていった。
国境の沙陽鎮に到着すると、この小さな町は辺鄙ながらも、商人や武者が行き交う要衝であった。酒楼は人々の声で賑わい、蕭逸風は隅の席に座り、四方の会話に耳を傾けていた。突然、外から女の叫び声が響いた。「放して!」
蕭逸風が声の方を見やると、数名の覆面をした賊が一人の少女を引っ張っていた。少女は短刀を手に必死に抵抗し、その瞳には恐れと強い意志が宿っていた。
剣光が一閃し、蕭逸風はすでに剣を抜いていた。その剣勢は電光の如く鋭く、剣気が空気を切り裂き、賊たちは驚き恐れ、逃げ去った。少女は地面に座り込み、剣眉星目の若者を見つめ、心に敬意を抱いた。彼女は命の恩人に感謝し、賊がモンゴル人に指示され、この地で略奪を繰り返していることを明かした。蕭逸風は警戒心を抱き、「どうやらモンゴルはすでに中原に密かに手を伸ばしている。急いで大砂漠へ向かわねば」と心の中で呟いた。
広大な大砂漠に足を踏み入れると、黄砂が荒れ狂い、烈日が焼きつけ、夜は凍てつく寒さが身を襲った。蕭逸風は何度も砂嵐に進路を阻まれたが、「青雲歩法」を駆使して迅速に立て直し、不屈の意志で一歩ずつ前進した。師父・雲鶴真人の教えを思い出す。「江湖は危険に満ちている。宝は魅力的だが、何よりも心を守らねばならぬ。」
廃れた驛站で、蕭逸風は一冊の破れた古書を発見した。そこには宝の秘密と「龍象訣」の威力が記されていた。「龍象訣を極めれば、千軍をも敵に回す力を得る。もし青雲宗がこの秘技を得れば、再興は必ずや果たせる!」
蕭逸風は書を閉じ、その瞳に強い決意の光を宿した。風が彼の衣を舞い上げ、宗門の未来を背負い、蕭逸風はたった一人、未知なるモンゴルの大砂漠へと歩を進めた……