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第9話 新しい日常の始まり

9.新しい日常の始まり


 「光喜様、失礼いたします」


 ネルはドアをノックし、光喜の部屋へと訪れた。


 魔導刻は17時21分と表示されていた。

 どうやら4時間ほど寝ていたらしい。


 ネルは主人に仕えることを何よりの喜びとしている、ちょっと病んでしまっているものの、非常に優秀で、そして美しすぎる女性だ。


 美しく腰まで伸びている藍色の髪はまるでビロードのよう。


 同じ色のまつ毛は程よく長く美しく、切れ長で大きな目には、見る者の心を鷲掴みにするほどの魅力を宿す、翡翠のような美しい瞳が煌めいている。


 芸術品のように洗練された、すっとした美しくも可愛らしい小さな鼻。


 愛くるしくも艶っぽい唇は、見るものに色情を抱かせるには余りある程だ。


 整いすぎているかんばせの横には、髪から見え隠れしている長めの耳がうかがえる。


 四肢はすっきりとし、黄金比のような計算しつくされたバランスを保ち、驚くほど白くなまめかしい。


 胸部は程よく肉付き、美しさと卑猥さが、芸術品のようなバランスを保つがごとく共存している。

 腰は細く締まり、腰から足にかけてのラインは同姓ですら見惚れてしまうほどの妖艶な曲線美を描いている。


 そしてそんな彼女を極限まで引き立てる黒を基調としたゴスロリ調のメイド服。


 露出は少ないはずなのにエロイズムの極致といえるようなあざといデザイン。


 見えそうで見えない絶対領域、ふくらみの質感がうかがえるような繊細に計算されつくされた装飾。


 まさに世界中の女性へのあこがれ、理想を体現したかのような、非現実的を無理やり具現化したような、創造主が作り上げた完璧な容姿。


 年齢は不詳だが、少女のような可憐さと、熟女のような妖艶さを併せ持つ魔性の存在。


 この世界が地球と似たような文化であるなら、きっと彼女をめぐり幾つもの国が滅んだことであろう。


 自然と熱いため息が漏れてしまう。



 マジもんの『傾国の美女』だ。


※※※※※


 「光喜様、よくお休みのようでしたので、こちらへお食事をご用意いたしました」


 ネルを見つめてそんなことを思っていた光喜は、ネルの声で我に返った。


 「!…ありがとう」


 顔に熱がこもる。


 そんな様子の光喜に対し、ネルはにっこりと微笑むと、心地よい鈴を鳴らすかのような声で笑うのだった。


 用意された食事は、ふっくらした白パンに、サラダ、ゴロゴロした具材がしっかり煮込まれたシチューで、正に異世界といったメニュー。


 驚くほどおいしかった。


 一通り食事を済まし、食後の紅茶を用意しているネルに光喜は声をかけた。


 「ネル、今の俺にできることはあるか?まあ、能力も限定的だし、記憶も色々とちぐはぐだ。でも、何か違和感?というか焦燥感を感じるんだよ」


 俺を見つめるネルの視線に耐えられなくなった俺はそっぽを向き言葉を続ける。


 「授かった?記憶も、虫食いだらけで…ほとんど思い出せない状況なんだよね。ちょっと不安っていうか…」

 「光喜様…」


 ネルは少し拗ねたような表情を浮かべると、するりと光喜に抱き着いてきた。


 光喜の胸に押し付けられた柔らかな双丘が存在感を強調し、均整のとれた美しい腕が光喜に絡みつく。


 「っ!」


 ネルの柔らかな感触と、何とも言えないクラクラする様な良い匂いに、光喜は絶句してしまう。


 「光喜様、焦らないでくださいませ。まだ戻られて数刻しか経過しておりません。まずはお話しできる内容を精査している段階です」


 そして今度は頬を上気させて。

 ネルは愛おしそうに光喜の頬に手を這わせる。


 「わたくしについては、どの程度認識されておられますか?……先ほどの光喜様のまなざし、期待してもよろしいのでしょうか?」


 つぶやくような小さな声で、甘くささやく。


 「!!!???」


 やばいっ!死ぬ!心臓が破裂する!!!

 なんだ?やばいっ理性が…?


 かっかっかっ可愛い、とかじゃない!マジで理性が崩壊するっ!!!


 「わたくしは光喜様のものですよ。あなた様は、望むように、赴くままに、お好きにすることができる唯一のお方です。」

 (ああっ、あああっ、光喜様っ!わたくしはとっくに準備は完了しています。唇をっ、体を、私を、味わってくださいませええええ)


 本音と建前がほぼ一致しているだと?

 しかも本音は過激すぎるううう!!?


 光喜の精神の享年、37であった… チーン…


 ネルに迫られた光喜は、あまりにも頭に血が上り、大量の鼻からの出血と意識の喪失により、大人の展開には至ることはなかったのだった。


 その後、非常にネルが不機嫌そうに、でもなんか弟を見守るような優しいまなざしで光喜を見つめるのであった。

 (光喜様はいじわるです…でも、なんて可愛らしいのでしょう♡)


 …すんません…でした。


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