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第229話 姉ちゃんの自爆

229.姉ちゃんの自爆


(新星歴5023年5月4日)


 俺はいくつか確認することがあり、昨日の夜はギルガンギルで過ごした。

 もちろん愛する茜と5柱の神々とは心を通い合わせた。


 因みに沙紀さんはもういない。

 完全にアルテミリスと同化したようだ。

 まあ茜に対して200年前以上に愛を直接的に表現するようになったけどね。

 茜にも伝えた。

 アイツお母さんに会えて喜んでいたよ。


 そんな茜だが、今めっちゃ可愛い。

 離れていた時間もそうだし、凍結していた17年間で、俺への想いが上限突破したようだ。

 まあその、可愛すぎるんだよな。


 後やばいのがアートだな。

 アイツこの200年間で俺の好みを完全に理解したようだ。


 思わず経験豊富過ぎる俺が我を忘れてしまった。


 もちろんアルテ、ダニー、エリス、レアナだって最高の女性だ。

 俺は毎日感動を新たにしていた。

 

※※※※※


 それはともかく俺は今聖域の最奥で、ある試みを行っていた。

 昨日いきなり浮かんだ原初の頃の俺の事情。


 この世界に現れた時にいた誰か。

 俺はそいつに会う必要を思い出していた。

 

 だが、どうしても思い出せない。

 だから俺は自分一人での努力を放棄する。

 一人でできないのなら仲間を頼る。


 200年前とは違う俺の矜持だ。


 俺は自分の真核に魔力を込める。

 そして自己を遡っていく。

 幾つもの想いが俺の真核をざわつかせていく。


 「……ん?……あ、あー、姉ちゃん、つながったかな?……おーい」

 『……もぐもぐ……ゴックン……ふう、なによ?このあほ弟』


 姉ちゃん、何食ってんだよ。

 あんた運命の女神様だろうに……


 『お腹すくの!!良いじゃん別に。……で、何?私忙しいんだけど』


 おう、相変わらずだな。

 いかんいかん、つい気圧されてしまう。


 「なあ、姉ちゃん。俺って今どういう状況なんだ」

 『……な、なによそれ。……あ、あんたはあんたでしょ?』


 うん?

 言い淀んだ?

 ……どうやらビンゴかな。


 『う、わ、私何も知らないよ!?知りませーん』


 知っているな。

 絶対に知っている。


 『ぐうっ、弟のくせに生意気だぞ!!なによ、良いじゃん別に。どうせもう負けないでしょ?あんた。今更あいつに会う必要なんて……あっ!?』


 「あいつ?……姉ちゃん、誰だ?」


 きっと次元も摂理も違う世界だろう。

 だが何故か伝わる姉ちゃんの焦り。

 ここはもう一押しだな。


 「栄人兄ちゃんとはキス位したのか?姉ちゃん好きだったろ、栄人兄ちゃんの事」

 『は、はあ!?な、な、何言ってるのかな!?この馬鹿弟っ!!そ、そ、そんな事……』

 「栄人兄ちゃん、ずっと姉ちゃんこと好きだったもんな。姉ちゃん死んだときスッゴクわんわん泣いてたっけ」

 『ぐうっ、ず、ズルいぞ!ふ、フンだ。そういうこと言う悪い弟にはザルガルーナの事…ひいっ、言っちゃったじゃん、どうすんのよ!?』


 慌てふためく状況が目に浮かぶようだ。

 意外とチョロいのよね、うちの姉ちゃん。


 「しらんがな。姉ちゃんが自爆しただけでしょうに」

 『うう、怒られる~……もうやだ。バイバイ』


 つながりが途絶える。

 まあ俺はパスを構築したからね。

 いつでも繋がれるようにはしておいた。


 それはともかく……


 ほう『ザルガルーナ』ねえ。

 うん?

 ザルガルーナ……んんん!?

 

 何故か冷や汗が止まらなくなる俺。

 これ、ダメな奴じゃね?


※※※※※


 「何もない……なにここ?」


 およそ40万年前。

 この世界には何もなかった。


 「おれ、死んだのかな。……姉ちゃん?……いない?」


 上も下も分からない。

 俺は今空に浮いているみたいな感じだ。


 「はあ、14で死ぬとか……母さん、父さん、雪乃、なんかごめん……姉ちゃんも……きっとだめだよね。トラックだもんな」


 俺は呟いた。


 それからどのくらいそうしていたのか……

 分からない。


 変な世界だ。

 眠くもならないし、お腹も減らない。


 ただ暇だ。


 「うーん。俺今どうなってるんだろ。自分の体も見えないんだよね」


 そんな時だった。

 ふいに何かの気配がした。


 そしてなぜだか凄く怖くなってしまう。

 意味は分からないけど……


 「あーん?なんだお前?どうしてここにいる?」

 「っ!?」


 突然目の前に現れた変なもの。

 ぬいぐるみ?


 「お前失礼な奴だな。俺様はザルガルーナだ。偉い」

 「え?偉い!?」

 「おう。偉い」


 えっと……

 どうしよう。


 「お前、何でここにいる?俺様はお前を知らないぞ」

 「えっとですね、俺多分死んだみたいで……気づいたらここにいました」


 「ふーん……お前、創造主とか興味あるか?」

 「えっ?創造主?」

 「おう。何でもできるぞ。エッチな事とかなっ!!」

 「え、エッチ?」


 何故か顔を赤らめる偉いザルガルーナ。

 うわ、意味わからないけど!?


 「くふふ、エッチは至高だ。くううー俺もしたいぞ」


 そして手のような物をワキワキと動かす。

 途端に残念臭が充満していく。


 「む?失礼な奴め。ふふんお子様には分かるまい。はあはあはあ♡エッチの素晴らしさなどな!!」


 うあ、マジでどうしよう。

 この人?エッチしか言わないんだけど……

 もちろん俺だって男だから興味はあるけどさ。


 「ふん。で、どうする?やる?やらない?」

 「えっ、はい?」

 「おう、ナイス快諾。じゃあこれやるよ」


 いや、肯定じゃなくて、疑問のハイなんですけど?


 突然偉いザルガルーナさん?は1冊のノートを俺に渡した。

 いきなり俺の腕が出現しそれを掴む。


 「ひうっ!?うわ、なんか変な感覚」

 「うん。お前今創造したからな」

 「えっ?」


 「じゃあな。また来るわ」


 そして消える偉いザルガルーナさん。

 俺は片手だけ生えていてノートを掴んだ状態だ。


 「ええええええっ!?」


 そして永遠が始まった。


※※※※※


 「……思い出した」


 俺は思わず蹲る。

 そうか。

 ザルガルーナか。


 ……取り敢えず放置でいいかな。

 うん。

 そうしよう。


 俺は考えるのをやめた。

 だって意味がないのだよ。


 あれは現象を司るものだ。

 理解の及ばない何かだ。


 「……グースワースに帰ろう。そしてネルに甘えよう。うん、そうしよう」


 思い出したことで俺は色々と後悔していた。

 きっと間違えていた。

 でも、それこそがあいつの思惑なのだろう。


 「あーあ。まあしょうがないな。取り敢えず……一度会いに行かなくちゃだな」


 俺はグースワースへと転移した。


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