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第17話 宴の後で

17.宴の後で


 皆の能力の把握に結構時間を費やした。

 魔刻計が18時4分を表示していた。


 「そろそろ…かな?」


 俺は独り言ちると姿勢を正し、意識を自分の頭部へと集中させた。


 『なんだよ。感が良いじゃねえか』

 「まあね…」

 俺は姿見に向き合い、魔神眼を発動させた。


 姿見の俺の頭の上に、ふよふよと浮いている、白銀をまとう漆黒の発光体を視認することができた。

 その発光体は、ゆっくりと俺の手のひらへ降りてきた。


 『いつ気づいた?』

 「んっ?さっき皆の話聞いた後かな」

 『フン…まあ、及第点、かな。赤点ぎりぎりだがな!』

 「これは手厳しい」


 俺はかつての魔王の力の抜け殻である、ノアーナを見つめた。

 白銀をまとう漆黒の発光体。

 本当の魔王ノアーナ。


 やっぱり俺はスケープゴートだった。

 確信してしまう。

 だが。


 「疑問だらけなのだが?」

 『…』

 「おいおい、だんまりとはひどくないですかね?魔王様?」


 白銀をまとう漆黒の発光体は抗議するように点滅した。

 『足りねーんだよ。分かんだろ?』

 「あー…まあ」

 『たくっ、これだから童貞は面倒くさいんだよ!一番近い存在であるネルの中に俺があることが分かって居るんだろうが!サッサっと覚悟を決めて抱きやがれ‼』


 そうなのだ。

 魔人眼が発動した瞬間、ノアーナを構成する存在の場所が、本能的に理解できたのだ。

 まだ能力値が低いようで、グースワース内くらいしか感知できないが。

 だからステータスを確認したのだが。


 ひときわ大きいのがネル、その次に大きいのがロロンとコロン。

 次いでカリンとミナト。

 さらにはノニイ、ミュールス、エルマ。


 えっと、女性全員じゃねえか!

 つかエルマは両性具有だし?


 彼女たちの中、というか心?真核に俺の存在があるのだ。

 『まあ、俺様への信愛の深さに、欲情を混ぜるとそこに寄生するように俺が設定した』


 「なんでそんな面倒なことを?」


 『俺の愛したこの世界を守るためだ!!』


 白銀をまとう漆黒の発光体はひときわ強く発光した。

 まるで叫ぶように…


 『最初は戯れだった』

 「…」


 『自分の存在理由?そんなくだらないことに悩んだこともあったさ』

 「…」


 『でも手に入れた。手に入ってしまった!』

 「…えっと、何でもできるんだろ?何を悩んでいるんだ?」


 『…くそっ。話しすぎた。終わりだ』

 そういうと、白銀をまとう漆黒の発光体は『見えているが見えないように見える』もやに飲まれていった。


 「っ!ちょっ!ちょっと待てよ!おいっ!まだ全然大事なことを聞けていない!」


 俺はノアーナが消えていった空間を見つめながら固まってしまった。


 なんだよ?意味深なこと言いやがって。

 分からないでしょうが。

 それだけじゃ。

 …この世界を守りたい?いや、何が手に入ったんだ?


 俺は頭を抱えながらベッドへと倒れこんだ。

 ちゃんと説明してくださいよ!こっちは陰キャでコミュ力レベル最低なんだから!


 などと悶えていたら、突然頭に念話が届いた。

 『とりあえずネルを抱け。話はそれからだ…大事にしないとぶっ殺す!』

 『フン!』


 そして今度こそ存在の認識はできず、俺は魔王様に言われたミッションに頭を抱えるのであった。


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