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祝福されたテイマーは優しい夢をみる【2巻発売中】  作者: はにか えむ


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83.エルフの里へ

 学園が春休みに入った今日。僕達はエルフの里に冒険に行くことにした。事前にクリアに手紙を持たせて確認したところ、二泊三日の小旅行になった。とても楽しみだ。

 

「エルフの里の周囲の森ってあんまり情報がないんだよね。どんな魔物が居るんだろう!珍しい植物もあるかな?」

 テディーが声を弾ませて楽しそうにしている。

 僕も前回は里に行っただけなのでほとんど知らない、森には強い魔物が多いそうだけど、族長が迷子にならないようにガイドをつけてくれると言っていたから安心だ。

 

 僕達は泊まりの準備をして転移ポータルでエルフの里に向かった。

 前回と同じように森の中に入ると、今日は族長自ら迎えに来てくれた。

「ああ、久しぶりだなエリス。また少し大きくなったか?」

 そんなことは無いと思う。まだ前回会ってからそんなに経っていないのだから。

「お友達も、私は族長のエリカだ。折角遊びに来たんだ、ゆっくり楽しんでいくといい」

 みんな族長に頭を下げて挨拶していた。族長は楽しそうだ。


「まず里に入ろう、荷物を置いたら里の中を案内してやろうな。子供が来るのは珍しいからみんな喜ぶぞ」

 里に入ると、皆感動しているようだった。僕も何度観ても中央の大木はすごいと思う。カラフルな染物もオシャレで素敵だ。

 族長は空き家を用意してくれていたらしく、僕達はそこに泊まることになった。

 

『エリス、ちょっと親に挨拶してくるな』

 クリアはそう言って飛び立ってしまった。そう言えば、クリアにも親はいるのか。この里のテイマーにテイムされているのかな?その辺のことを族長に聞いてみる。

「ああ、そうだよ。あの子は里のテイマーのテイムしている幻鳥が産んだんだ。兄弟も里にいるぞ」

 僕はクリアが寂しくないか心配になった。できるだけこまめにここに来るようにしようと思う。

「クリアの心配をしているのか?エリスは優しいな」

 族長が僕の頭を撫でてくれる。家族と離れるのは寂しいことだと僕は知っているから心配するのは当然だ。


 その後は里の中を案内してもらった。ナディアは里の染色技術に興味を持ったらしく、染物職人さんに色々質問していた。

 メルヴィンは里の加工食品を作る建物で試食に貰ったソーセージをとても気に入ったようで製作風景を見学させてもらっていた。

 里の人達は子供の僕らにとても優しかった。挨拶する度みんな口を揃えて今日は宴だと言うから面白い。

「みんなはしゃぐ口実がほしいだけさ」

 族長が呆れたように言うけど、僕達は歓迎されているようで嬉しかった。

 

 一日里を満喫すると、あっという間に夕方になった。広場に行くと、宴会の準備が進められていた。

 クリアが数匹の幻鳥を連れて戻ってくる。クリアの家族かな?

『俺の母さんと父さんと兄弟だ、挨拶したいって言うから連れてきた』

 僕はクリアに通訳して貰いながら挨拶する。お母さん鳥にはこの子が迷惑をかけていないかと問われたが、クリアはとても賢くていい子だ。迷惑だなんてとんでもない。そう言うとお母さん鳥は安心したようだった。幻鳥の巣立ちはとても早いが、家族の絆は大切にするのだと教えてもらった。やっぱり定期的にここに来ようと思う。

 

 それを見ながら族長は笑っていた。

「クリアのためにも沢山遊びに来るといい」

 もしかして僕をここに遊びに来させるために幻鳥をくれたのかな。そんなわけないよね。胡乱げな目で族長を見ていたら、乱暴に頭を撫でられた。

 

 宴の準備が調って、僕らは皆で並んで座る。相変わらず料理がとても美味しかった。シロにも沢山のお肉を用意してくれていたようで、シロは嬉しそうにシッポをブンブン振ってエルフのお姉さんに顔を擦り付けていた。

 シロは沢山食べるから少し申し訳ないような気がしたけど、族長が里ではウルフの餌確保のためにも毎日狩りに行くから大丈夫だと言ってくれた。そうか、里にもティムされたウルフが沢山いるんだった。僕はちょっと安心した。

 

 エルフの踊りが始まると、剣舞のようなカッコイイ踊りに感動したメルヴィンが、踊りを教えてもらっていた。

 体格のいいメルヴィンが踊るととてもかっこよくて、思わず拍手してしまう。ナディアとグレイスは里の女性陣とオシャレの話をしていた。

 テディーは僕の横で族長にこの辺りで取れる植物について聞いている。族長はテディーの知識量に感心したらしく、エルフと人間の薬の違いについてだとか、難しいことも教えてくれた。

 

 楽しくて、あっという間に夜になってしまう。明日は冒険だ。

 みんなはしゃいで疲れていたのか、借りた家に入ると寝支度もそこそこに寝いってしまった。

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